象印のマグボトルを買った。
500ml用。
今までずっと、母が生きてる頃から使い続けていたパール金属のmade in chinaの、なんとも言い難いピンクと赤と紫のどれでもない色のマットのマグボトルを棄てた。
ひとつ鱗が剥がれた気持ちだ。
つらい時を常に持ち歩き喉を潤わせた。
蓋とボトルの間のリングが割れても用を成していたので割れたままどこへも持ち歩いた。
母が逝き言葉を失った数ヶ月、母の車に乗り朝といわず夜といわずどこへでもでかけた。主には車の運転練習場に使った山。
真夜中、星のない夜、遠くの山々の稜線は闇に消える。
茅と芒を風がなでる静かな刻。
それだけの闇。
そこで朝まで眠った。
おしっこもうんちも大地にした。
昔の昔の昔の人は、こうして用足しをしていたのかと可笑しかった。その笑いは母が恵んでくれたもの。
喪失にも喜びやうっかりわらいがうまれる。
その笑った夜、感情が戻りつつあると思った。
義兄にはひどく叱られた、否、やさしくきびしい言い回しで、女がそがあなところで夜を明かすなんちゅうことがあるもんか。と。
人もけものもなにが襲ってくるかわからんので。と。
デパスを飲むとからだが緩んだ。
母が死んでも緊張感と堰どめされた感情の複雑なからみあいがデパスがわけを問わず緩ませてくれた。
そんな夜、おおくでかけた。
怒られて当然。
そこにあのマグボトルはあった。
海にも行って波の高い防波堤に立って生きてることを感じた。
義兄は、死ぬで。と。
ときどき予測できない大波がきて防波堤で壊されながら上のものをさらっていく。
いっぱつで。と義兄。
わたしがくすっとわらうと、わらいごとじゃなぁーでぇ。とやさしくきびしく。
いっぱつでしねるんかぁ。うそじゃろう。波にさらわれてもまれて意識なくなるまで悶絶生き地獄じゃろう。と心で想像した。
いっぱつで、死ねることって他殺と不慮の事故と不幸な事故しかないんじゃないの。首を吊るのが一番早いらしいがしにざまが嫌だ。負けた感じが凄まじい。
東京へ戻ってマグボトルは私とともに移動した。夏も、真冬も。どこへもいっしょ。
もうずっとお茶がおいしくなかった。
限界だなって前から知ってた。
思い出を捨てるときは潔く棄てるに限る。
象印の500mlのメタリックが完売で青を買った。
さよならマグボトルはもうこの家にはない。
ありがとう。
象印のマグボトルはお出かけにはごつくて難ありだが、朝淹れた麦茶が夕方も熱いほど。
ねぇさよならマグボトル、やっぱり象印は違うね。一心同体だった君も認めるよね。
それにマットじゃなくてメタリックブルー。
さよならマグボトル先輩、後継者を大事にします。
死ぬまでこれを大切に使おうと思いますので、さよならマグボトル、わたしの胸の乾きをこれからも潤してね。
メタリックブルーはすかしたセレブ感出してるけど、じきじき先輩と一体化できたように、相棒にしてみせます。
象印はスゲーよ。
今日は役所。
昨日は寝込んでしまった。
一日中強風突風で、花粉症状があまりにひどくて4錠一気に飲んだら夕方まで起き上がれなかった。
眠剤より効くじゃんと、思わなくもない。
デエビゴ、話にならんから。
歩いていこうかな。
カウンセラーは過食は愛情を食べてるんですねと言ったが、当たってるがもっと乾燥したかんじ。
今だってすごくしたい。寝てるか食ってるか。
オオサンショウウオと哲学的な話を3分くらいした。
3分できる、わかりあえる、共感共有しあえる貧乏仲間がいて精神セレブではあると思う。
足りないがせつない想いは無感情を荒だたせるからそれをのみこむ。
マグボトルのことを考えたら病むので、病まないよとうそぶいて思考に丸を打つ。
ほんと!ありがとうね!