父親の前で『昴』をねだられて独唱したのはこどものわたし。
酒を飲んでいい気分の父は、てもみの手拍子で私が歌う昴にぽろぽろと涙をこぼしていた。
その父が逝き、母が逝き、谷村新司も10月8日に病死したらしい。
この世の生きる苦しみから解放されて、おめでとうおつかれさまと言いたい。
命の余力があるうちは生に執着するが、病苦の辛さは死と生の最期の闘いで相当に苦しい。父も母もそうだった。
母においてはその日に逝かせてあげる約束を、こどものエゴで一日引き延ばした。
母は泣いていた。
あの一日の懺悔は現世では詫びることはできない。
生きてるものが流す故人への涙は勘違い。
故人を失った自分にうちひしがれてる辛さのエゴの涙だ。
最期の闘いはなく、おばあちゃんみたいに昼メロを見て鼻で嘲笑った後ことりことりとうたた寝からあの世へ逝きたい。
~昼寝の続きが死とか最高じゃん~。
順番順番。オオサンショウウオは言うが、風邪を引いた。
死がつらいんじゃない。
生きようとする老体がつらいんだ。