活きの良い‘麻雀渡世人’ベンジャミン
勿論、当人は時代劇に出てくる昔の放浪ヤクザ稼業の職業ではない。しかし、‘麻雀’でこの世を放浪する様と、このまま着流し姿で、長ドスを差せば、どこか、そのままクロサワ映画に出てくるような雰囲気は、そんな男に思わせる。ところがご本人はアメリカ東部の生まれ育ちで、今日本の京都大学に‘麻雀学’で留学に来たという生粋の知性派ゲームマンだから意外や意外。しかし、なんとも活きの良い、きびきびした青年である。
麻雀で世界の選手権を渡り歩く。その足はヨーロッパの各地まで行くのだから、私の‘放浪’という表現も満更うそではない。その彼がスウェーデンに行った時のこと、彼が云うには、感激の瞬間の出来事は、スウェーデンのゲーム・セレブのダンに会うことが出来たことだったそうだ。前回のブログで書いた、あのダンである。知ってますかと云うから、古い友人だよと云ってやったらびっくりしていた。世界は広いけれど、ゲームの世界はグローバル(?)に狭い。彼も麻雀という‘道’を求めて放浪して行く世渡りにはスウェーデンのダンは輝かしい存在なのだろう。
日本でのフルブライト資金による京都大学留学というのも、彼の流浪人生の一幕。フルブライト奨学基金といえば、我々のイメージでは昔から、学問を目指す青年への奨学プログラムで、大昔から竹村健一をはじめ多くの人材を生み出した事で有名。しかし、「麻雀で京大へフルブライトで留学?」 と聞くと、正直、なるほどそういう世の中なのだ、という感想。しかし今やゲームも学問化して、そのゲームの世界で、こうして元気にのし歩いている、活きの良い若者が出て来ているのだ。自分の趣味という域を超えて、自己の跳躍に活用する。ゲームの世界がこういう風にインフラとして広がっている。
アメリカ東部の名門、アイビーリーグのひとつ、ブラウン大学の卒業生だから、マナーも話し方を東部的。しかも生まれも育ちも東部で、大学はブラウンがあるロードアイランドという、アメリカでも一番小さな州だが、歴史と文化度の高い土壌。我々にはロードアイランド州といえば、ハスブロの本社というイメージしかないが、古い伝統の地域から、こういう青年が飛び出して来るのも面白い。
日本に来て短期間住んだ多くの外国人が、日本の魅力に取り付かれて住み続けたいと希望するケースが多いと聞くが、彼もそんな様子だ。京大の課程を終わった今、もう一年、今度は自費で、関東は横浜に住んで、日本語学校で本格的に勉強すると云う。この一年はフルブライトがないからきついだろう。活きの良い彼のことだから、めげずに日本語学習だけに埋まることなく、ゲームの精進も目指すだろう。しかし、アメリカのエリート育ちのインテリ青年だから、まさか、‘賭け麻雀で渡り歩いて稼ぐ渡世人‘、なんてことはないだろうな。「日本語」と「麻雀というゲーム」という身についたふたつの武器。まだ25歳、いわば人生のスタート。彼はどんな選択をして行くかわからないが、ゲームの世界に魅せられて、それを自分の跳躍に活用して行く一生には間違いない。