産業界の巨人は小さくて、好々爺。
84歳のL.T.は今日も愛車のベンツを自ら運転してやって来た。今回私に頼まれて、可愛い孫のビクターを連れている。とはいえこの孫はコーネルのMBAで、すでに会社役員の誠に愛くるしい青年。育ちの良い青年は気持ち良いね。うちの息子はどう見えるんだろうなあ? 一方、好々爺は顔中くしゃくしゃにしたいつもの笑顔で人をとりこにする。
正直、1米55にも足らない小男で風采の上がらないこの好々爺が、20,000人の工場群の企業を率いる創業者で総帥とは、まずは誰も想像つくまい。しかし、まず驚くのはろくに学校も出ず、17歳で玩具工場を創業し、苦労を重ねた中国人なのに、誠に立派な英語力で雄弁だ。今日もアメリカの中国玩具工業への不当な圧力を非難する。
世界の玩具・ゲームの主要生産がドイツから日本、そして韓国、台湾と移って、香港を経て、いまや中国が「世界の生産地」となって久しい。それが昨今マテル社の商品リコール問題から、中国の安全、品質への世界の批判が一気に噴出した。こういう時にはこの好々爺の出番だ。ランチの間じゅうもどう戦っているか、口角泡を飛ばす。しかし、この歳で中国玩具業界のスポークスマンとして第一線に貢献しているのだからたいしたもの。
玩具、ゲーム、おもちゃは大企業を目指す若者達には、物足りない業種産業に見えるかもしれない。高度に細分化された企業社会の現代では、若者には夢が持てるチャンスが少なくなっている。しかし良く見ると、この分野は、現代に今でも残されている数すくない「現代のドリーム」を追える仕事に思える。まずグローバルだ。ルービック・キューブに国境は無い。そしてメディアは、言語が要らない音楽、絵画のようにユニバーバル。そして僅かな資本でも企業化可能な規模産業だ。まさに「Boys, Be Ambitious!」。君のアイデアを生かせる商売なんで、他にそんなに無いよ。
香港から広州の奥まで広範な一帯が世界で名だたる「珠江デルタ工業地帯」だが、そのなかのドンガンの工場で、今日1日、日本グループとオランダグループの見学者を迎える。深夜、香港に戻り着く。帰りの車内で、迎えた我々日中チームは ‘夢’を語り合う。今日来た日本の会社とは縁が深くなるだろうな、とか、オランダの来年の売上げが増えるだろうな、とかだ。我々今日のチームの平均年齢50歳の‘夢’だが、夢に歳は関係ない。こんな会話が今日の疲れを取ってくれる。
だがしかし、 L.T.のように自社工場の土地の小学校に校舎を寄付したり、コーネル大に記念ホールを贈呈したりするケースのような彼の描いてきた‘夢’とは桁違いだけどね。 はるか道遠~しだ。 あ~あ、ウィザード・ガードゲームを流行らせて、ミャンマーに小学校を寄付した~~い。