(Wikipedia-最終更新 2011年4月4日 (月) 01:20)
東京電力原発トラブル隠し事件は2002年に発覚した東京電力管内の原子力発電所のトラブル記録を意図的に改竄していたことが発覚した事件。
この事件は当時の南直哉社長らが引責辞任するに至った事件で産業界に大きな影響を与えた。
一連の不正が発覚したのは「自主点検」と呼ばれる作業。電気事業法五四条に定められた定期点検とは異なる。原子炉等規制法では自主点検でトラブルが見つかった時も程度に応じて国に報告するよう義務付けられている。
点検作業を行ったアメリカ人技術者の内部告発が切っ掛け。しかし東電側は「記憶にない」「記録にない」と非協力であったため調査は難航した。
[編集]経緯
[編集]内部告発
2000年7月、ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社(GEI)から東京電力の福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所の3発電所計13基の点検作業を行ったアメリカ人技術者が通商産業省(現経済産業省)に以下の内容の告発文書を実名で送った
[1]。
一、原子炉内の沸騰水型原子炉にひび割れ六つと報告したが自主点検記録が改ざんされ三つとなっていた
二、原子炉内に忘れてあったレンチが炉心隔壁の交換時に出てきた
[編集]保安院の調査
告発を受け原子力安全・保安院は事実関係を調査。2001年1月以降、GEI社員から複数の点検記録の写も添えられ、信ぴょう性の高い文書も届くようになったが、GE社員はその後転職。また東電も「記憶にない」「記録にない」などと非協力的な態度を示したことから調査は非常に難航した[2]。定期点検と違い自主点検の資料請求義務はなかった。
しかし2002年2月、GEが保安院に全面協力を約束。その結果東電も不正を認めざるを得なくなった。
[編集]謝罪・辞任
8月29日、保安院は会見で東電の不正を報告。その夜、築舘勝利常務が緊急記者会見し「なお未修理のものが現存するが、安全上問題ないことを確認した」と強調
[3]。翌日、南直哉社長は記者会見し「このような疑惑を生じたのは誠に残念で、社会に深くおわびを申し上げる次第です」と陳謝。また福島第一3号機、柏崎刈羽3号機で予定していた
プルサーマル計画を無期限凍結すると発表した
[4]。
9月2日、南直哉社長はじめ社長経験者5人が引責辞任。会見で南社長は福島第一1号機で日本の法律では許可されていない「水中溶接」で傷の修理を認め、発覚をおそれ改ざんしたと述べた
[5]。「言い訳になってしまうが、どんな小さな傷もあってはならないという基準が、実態に合っていない」とも述べた
[6]。
辞任する社内・財界の役職
氏名年齢社内の役職財界などの役職
南直哉 66歳 社長
電気事業連合会会長
経済同友会副代表幹事
東京商工会議所資源・エネルギー部会長
荒木浩 71歳 会長 日本経済団体連合会副会長
平岩外四 88歳 相談役 日本経済団体連合会名誉会長那須翔 77歳 相談役 日本経済団体連合会評議委員会議長
榎本聡明 63歳
副社長
原子力本部長
[編集]刑事告発
経済産業省は組織的に改竄された疑いがあると見て原子炉等規制法で東電を刑事告発も視野に入れたが、結局厳重注意にとどまった。
[編集]改竄内容
福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所の原子炉計13基地において、1980年代後半から1990年代
にかけて行われた自主点検記録に部品のひび割れを隠すなどの改竄が29件あった[7]。
[編集]自主点検作業記録で判明した不正
原子力安全・保安院の報告[8]
原発原子炉損傷機器修理※
福島第一原子力発電所
1号機 シュラウドなど5箇所 ○
2号機 シュラウドなど3箇所 ○
3号機 シュラウド、工具の紛失 ○
4号機 シュラウドなど2箇所 △
5号機 シュラウドなど2箇所 ○
6号機 シュラウドヘッドボルトなど4箇所 △
福島第二原子力発電所
1号機 ドライヤー ○
2号機 シュラウドなど2箇所 ×
3号機 シュラウドなど2箇所 △
4号機 シュラウドなど2箇所 ×
柏崎刈羽原子力発電所
1号機 シュラウドなど2箇所 △
2号機 ジェットポンプ ×
5号機 ジェットポンプ △
※ ○修理または取り換え、△一部修理、×未修理
いずれも沸騰水型軽水炉で、福島第一、同第二、柏崎刈羽の三原発計13基。炉内の燃料体を取り囲んでいる炉心隔壁(シュラウド)や、冷却水を炉心に流すジェットポンプなどに関する29件の自主点検作業記録に、不正の疑いが見つかった。不正の疑いのある29件のうち、18件は、すでに機器が交換されたり、修理されたりしているが、残り8基11件については、ひび割れなどが残っている機器が現在も使われている可能性がある
[9]。
その後の調査では2002年1月にも同様のひび割れを二重に隠蔽して虚偽報告していた可能性も高まった[10]。福島第二原発4号機のシュラウドの「中間部胴」と「中間部リング」の溶接部にある2本のひび割れ。
東電社内報告書
東京電力側は9月15日、内部調査結果をまとめた百数十ページの報告書を提出。隠蔽29件のうち東電側が「不適切」と判断したのは16件で残り13件は不適切ではないと判断した。
内部報告書の不適切な事例16件[11]
発電所
原子炉
設備内容
保安院の評価※
福島第一原子力発電所
1号機
シュラウド ひびを報告せず A
蒸気乾燥器 ひびの発見日を改ざん A
炉心スプレースパージャー
補修箇所を黒く塗って偽装 B
ジェットポンプ管 ひびの発見日を改ざん D
2号機
シュラウド
ひびの一部しか報告せず。ひび部分に金属板を立てかけて隠蔽
A
3号機
シュラウド ひびの兆候報告せず A
4号機
シュラウド ひびの兆候報告せず B
炉心モニターハウジング ひびを「異常なし」と虚偽報告。点検記録の改ざんをメーカーに指示
B
5号機
シュラウド ひびを報告せず A
アクセスホールカバー
閉まりきっていないボルトの存在を報告せず C
6号機 アクセスホールカバー
ひびを隠して補修 D
福島第二原子力発電所
1号機
蒸気乾燥器 溶接の日時を改ざん D
2号機
シュラウド ひびの兆候を報告せず B
3号機
シュラウド ひびの兆候を報告書に記載したいとのGEの要請を拒否 A
4号機
シュラウド ひびの兆候を報告せず B
柏崎刈羽原子力発電所 1号機
シュラウド ひびの兆候を報告せず C
※A=法令違反の疑い B=通達違反などの疑い C=不適切 D=問題なし
http://gxc.google.com/gwt/x?client=ms-kddi_blended-jp&u=http%3A%2F%2Fja.wikipedia.org/wiki/%25E6%259D%25B1%25E4%25BA%25AC%25E9%259B%25BB%25E5%258A%259B%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA%25E3%2583%2588%25E3%2583%25A9%25E3%2583%2596%25E3%2583%25AB%25E9%259A%25A0%25E3%2581%2597%25E4%25BA%258B%25E4%25BB%25B6&wsi=5e0df5699b4b5fb2&ei=AJ6ZTcGKEoewkAXu1oW8Aw&wsc=tb&ct=pg1&whp=30