今日私は、大淀川へ釣りをしに行っていたのである。

この時期は当然グチ狙いである。
いつもの釣り場へ行き車を停めようとしていたら、正式な名前は知らないが、東屋式のテント、つまり屋根の部分だけシートがあるテントを、設置している家族連れがいた。

釣りをしているにはしていたが、竿を一本構えているだけで、到底釣りを楽しみにやって来たとは思えない。

私はそれを、別に気にとめる訳でもなく、さっさといつもどおり支度をして釣りを始めた。

暫くすると、一台、二台と車がやって来たが、釣りをする訳でもなく、河川敷に停車して、ある者は車に乗ったままじっとしているし、あるカップルはとりあえず車から降りて、二人で川面を眺めながらボソボソと話しをしている。


やがて陽が暮れ、7時を回った頃、ドーン!!と、遠くで音がし始めた。

花火である。

私は、今日が花火大会の日とは知らずに釣りをしていたのである。

最初は、なにかイベントの余興かと思っていたのだが、いつまで経ってもその花火は終わらない。
もしかして、花火大会か。

「聞くは一時の恥」という言葉もあるし、と思い、私は勇気を出して…、携帯を手に取り、「大淀川 花火」と入力してウェブ検索を試みた。


検索結果は「大淀川納涼花火大会 9月20日」。


私は釣りをしていたのである。


仕掛けのオモリが子供達に当たりはしないかと気になって、思うように投げることができない。


あるご婦人が、私の所へ子供を差し向け、
「連れますか。」
と、しきりに質問をなげかけさせてくる。

私は釣りをしていたのである。

暫くすると、ご婦人本人が、

「何が釣れるんですか。」

と、私に聞こえるか聞こえないかくらいの声で言ったようだったが、聞こえるか聞こえないくらいの声だったので…、

私はそれを無視した。


しつこいようだが、私は釣りをしていたのである。

花火大会だろうがなんだろうが…、と思いながらも、周りに人が集まって来て、釣りどころではなくなり、仕方なく手を休め、暫く花火を眺めていた。

考えてみたら、かなり遠い場所からではあるが、これだけ長い時間、花火をたしなむのは久しぶりのことである。

こうなったら、花火が終わるのを待つしかない。

8時には終わると思っていたが、結局終わったのは、8時10分ぐらいであった。