私は、小学校の頃から、いつも誰かから虐めを受けていた。
小学校時代、初めて受けた虐めは、はっきりとは覚えていないが、どうやら私の態度が生意気だったことから始まったようである。

皆に対する口の聞き方が悪いのが原因だったように記憶している。

私自身、何人かから目を付けられていたことは、薄々感じていたと思うのだが、だからといって態度を変える必要も無いと思っていた。

そんなある日の放課後、私は5人か6人のクラスメートに囲まれ、口々に罵倒され、いつ袋叩きに合ってもおかしくないような窮地に追いやられてしまった。


どちらが先に手を出したのか、昔の事過ぎて覚えていないが、私はとにかく危険を回避しようと、向かって来る相手を次々に殴り、突き飛ばし、蹴飛ばし続けた。

結果、さっきまで私を取り囲んで悪態をついていた者達は、泣きながら帰って行ってしまったのだ。

これが、大人になってからの出来事であれば、ちょっとした伝説のような話しであるし、みんなに自慢したくてしょうがなかっただろうが、小学校の高学年の私には、もちろん初めての経験であったし、
「こんなこともあるのだなぁ。」
と思う程度で、かすり傷を気にする訳でもなく帰宅し、家に帰っても親には話さなかったと思う。


もちろん、この日を境に虐めはなくなったのだが、一年程して、
「あん時、お前凄かったよな。」
と、5、6人で取り囲んでいた中の一人と思われるクラスメートから話しかけられたのだが、私は、取り囲んでいたメンバーが誰と誰だったのか全く覚えておらず、
「ああ。
なんか、そんな事があったね。」
と、笑って応えたのみであった。


後で考えてみたら、毎日のように近くの川でエビや魚を追いかけていた少年の体力に、特別な体育活動をしていない普通の小学生がかなう訳がなかったのだろう。
その後、5、6人で取り囲んだにも関わらず、屈辱を舐めた少年達は、それぞれに必修クラブや部活に真剣に取り組み初め、メキメキと体力を増強させていったのであった。