コロナ禍で、旅をするのが難しい現在、創作物というのは、旅というものを別の角度から没入させてくれる素晴らしいものだと思う。
それは、文字のみの旅行記しかり、その土地を舞台にした小説しかり。
あるいは写真集なんかも、いいだろう。
しかし日本には、漫画という最強の創作物がある。
その数多の漫画の中から今日はこの1本を紹介したいと思う。
『舞子さんちのまかないさん』という、漫画作品である。
青森で生まれ育った幼なじみの2人が、舞子さんを目指して「上京」する物語だ。
僕の父が青森で仕事をしに出張したこともあって、馴染み深いという程ではないが、東北と呼ばれる地域では、1番親しみがあると言えるだろう。
一応、この漫画はふたつのジャンルの融合であると思っている。青春ものと、グルメもの。このふたつが作品に内在している。
この青森から上京した女の子の視点から、舞子さんの生活が丹念に描かれている。その丹念さが良い。
その丹念さを始点として、京都という世界の奥深さを表現していて、皇都としての壮大な歴史ではなく、今の京都のフィールドを感じられる作風になっている。
女の子たちの成長も、他の青春漫画とは一線を引いたような、あっさりとした描写だが、逆にそれがくどくなくて、すっと見に入る。
余計なものがない、ミニマムな感じなのだ。
そういった描写の中で、主人公2人の故郷青森への望郷であったり、懐かしさが回想として挿入される。
調べてみると、原作者の小山愛子さんは、青森出身の方らしく、それを知った時に何となく納得した。
地元の人でしか分からないような空気感を絶妙に入れ込んでいるような気がしたのだ。
他者からみた京都と、生まれ育った青森という、ふたつの世界を見せてくれる、素朴な青春漫画であると私は思う。