ウォールストリートジャーナル 318日 <一部抜粋>

ジョナサン・ワイズマンとステファン・パワーによる記事 

アメリカの政府当局者たちは日本の機能不全に陥っている原子力施設からの放射能漏れからもたらされる危機に関して、切迫した警告を出したことを擁護していたが、日本の規制当局からの異議を受けて、自分たちの持つ情報は“確定的ではない”と認めた。


アメリカ当局は木曜日に、損傷を受けた福島第一原子力発電所の放射能レベルとその状態についての独自情報を集める能力を強化している、と語った。


エネルギー省は当局者が“ポッド”と呼ぶ放射能検出センサーを持つ機器を日本に持ち込んだ。軍の無人偵察機とU2スパイ偵察機はデータを集めるために発電所上空で飛行任務を行っている。


ここ数日、アメリカ当局者の間では、現在進行中の大災害での日本政府からもたらされる情報の信頼性について、懸念が非常に高まっている、と政府関係者は述べる。アメリカ政府は今、地上で起こっていることについて正確な姿を捉えていないかもしれないと懸念しているのだ。


「日本政府からくる情報のスピードと正確さに関して、危機的なほどフラストレーションがたまっている。」と政府関係者は述べた。



そうした感情のため、そして、日本のようなプライドの高い、と同時に緊密でもある同盟国に対処する際に求められるきめ細かい外交姿勢のせいで、アメリカは日本政府の姿勢とは対立するように思えるような決断をここ数日でせざるを得なくなった、と政府関係者は述べる。アメリカは自国民を守るため、慎重すぎるくらい慎重な態度を取っているのだ。


日本でのアメリカの存在感は増しており、(日本)政府と情報を共有する一方で、過度に介入しないように気を配ってきた、と関係者は言う。


東京(=日本政府)との対立の兆候は水曜日に現れた。米原子力規制委員会委員長グレゴリー・ヤツコは下院議会の委員会で4号機で使用済み核燃料を保護する冷却プールの水は完全に蒸発しており、燃料棒を空気にさらし、放出する放射性物質の急増をもたらしている、と述べた。




そうした脅威を述べてから、ヤツコ氏とホワイトハウスは、水曜日、発電所から50マイル[およそ80km]内に暮らしているアメリカ国民は避難すべきだと語ったが、それはその前の放射能リスクに関する声明とは矛盾するものだったし、12マイル[およそ20km]以内に住む人たちだけが避難する必要があるとした日本の勧告とも矛盾するものだ。




原子力規制委員会が福島の使用済み燃料プールに関して得た情報は「大きな[状況の]変化の1つで、そのために私たちは情報を評価しなおして、勧告をすることを考え、実際に勧告したのです」とヤツコ氏は述べた。



木曜に、フランスと日本の規制当局は、4号機の原子炉の中にある使用済みの燃料棒プールに水があることを確認した、と語ったが、フランスの放射線防護・核安全研究所によれば、それは、そこに放水するために派遣されたヘリコプターの乗員が水があるのを発見し、その結果、ヘリコプターを3号機の方に振り向けたから、とのことだ。


エネルギー省副長官のダニエル・ポーンマンは原子力規制員会を擁護し、2台の放射線検知ポッドの測定値は、避難を正当化するようようなレベルの放射能を表示している、と述べた。


「重要なことは、その燃料棒を十分な水で満たしておくことには、明らかに困難が伴うように見えるということだ」ヤツコ氏は語った。



規制委員会の広報官は、木曜日に、4号機の燃料プールの状況については「証拠は今のところ確定的なものではない」と言った。しかし、彼が言うには、「私たちは、用心に用心を重ねなければならないのだ。」


ワシントンと日本での出来事は福島原子力発電所と、これが大災害へとなっていかないための努力をめぐる混乱を強めているだけだ。


東京電力の職員たちが恐怖をなだめようと努力を続ける中、ドイツと中国は原子力の開発を止めた。



オバマ大統領は木曜日、わざわざアメリカの反応の先頭に立った、つまりホワイトハウスでの演説で、アメリカ人に「有害なレベルの放射能がアメリカに達することはない、西海岸だろうと、ハワイだろうと、アラスカだろうと、あるいは太平洋上のアメリカ領土であろうと。」と請け合った。


ヤツコ氏の使用済み燃料棒の冷却プールについての発言は原子力専門家を驚かせた。


統一国家原子力監視官であり、科学国際安全保障研究所の所長であるディビット・オルブライトは、今までは原子力規制委員会の情報は完全に信頼できるものだと思っていた[がそうではない]と語った。


彼は4号機の放射線の上昇に関して2つの考え方がある、と言う。一つは原子炉が原因だというものであり、もう一つは使用済み燃料が原因だというものだ。ヤツコ氏は後者の考え方に賛同しているようだ。


しかし、オルブライト氏や他の専門家は日本人によって勧告されているものよりもずっと広い範囲で避難するようにという規制委員会の決断は健全なものだと言う。


一方で、産業界の関係者はアメリカの避難命令の科学的な根拠に疑問を投げかける。


アメリカの商業団体である核エネルギー研究所の広報官、スティーブ・ケレケスは日本の12マイル[およそ20km]内の地域から避難するようにという指示は「一般国民の健康への影響を最小限に抑えるのに十分なものに思える」と語っている。





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