BBC NEWS 3月16日 <一部抜粋>



金曜日の地震と津波の後、福島第1原子力発電所で、何回も爆発と火事が起こっている。こうした問題は日本の人々そしてさらに国外の人たちにどれくらの危険をもたらしているのだろうか?


どんな種類の放射性物質が出ているのか?


発電所の近辺ではセシウムとヨウ素が報告されている。専門家によれば、当然窒素とアルゴンの放射性同位体も出ているとのことだ。ウランやプルトニウムが出ている証拠はない。

これらの物質はどんな害をもたらすのか?

放射性のヨウ素は発電所近くに暮らす若い人には有害になりうる。1986年のチェルノブイリ事故の後では、結果として、甲状腺がんの症例があった。しかし、ヨウ素錠剤をすぐに配給された人たちは大丈夫なようだ。放射性のセシウムは身体の軟組織に蓄積するが、プルトニウムは骨と肝臓に蓄積する。放射性窒素は放出の数秒後には崩壊するし、アルゴンは健康には脅威にはならない。



どのくらいの期間汚染は続くのだろうか?


放射性ヨウ素はかなり急速に崩壊する。たいていは1カ月以内に消えるだろう。放射性セシウムも体内では長くは持たない。たいていは1年以内に消滅する。しかし、それは身の回りには消えずに残り、長い年月にわたって問題をもたらし続けることもある。



メルトダウンはあったのか?


「メルトダウン」という言葉がいろいろな意味で使われる。燃料棒を包んでいる金属の一部は熱によって破損し、部分的に溶けてしまったかもしれない(「燃料棒メルトダウン」)。 しかし、ウラニウム燃料そのものが溶けてしまったという兆候はまだない。ましてや、「チャイナ・シンドローム」の兆候はない。チャイナシンドロームとは、ウラニウム燃料が溶け、炉の下に集まり、連鎖反応が再開し、その過程ですべてのものが溶けることになり、地中深くをえぐるというものである。もし、仮に深刻なメルトダウンがあっても、日本の原子炉はそれに対処し、チャイナシンドロームを防ぐことができると思われる。



チェルノブイリのような災害になることはありえるのか?


専門家によれば非常に可能性は低い。福島の原子炉はすべて連鎖反応は止まっている。起こっている爆発は原子炉を囲い込んでいる鋼鉄とコンクリート製の格納容器外で主に起こっており、チェルノブイリでは、爆発は炉心を大気にさらし、火が何日も猛威をふるって、その内容物を上空に噴き上げた。(一方)福島では爆発は主に格納容器の周りに建てられた屋根と壁に損傷を与えている。もっとも2号機の鋼鉄とコンクリートの格納容器が破損したのではないかと恐れられているが。イギリスの専門家たちによれば、仮に福島の原子炉が爆発したとしても、チェルノブイリのような汚染物質が空中高くに噴き上げられるような事態は起こらないだろう、ということだ。汚染は原子炉付近の20kmから30kmの範囲内に集中するだろう。



核爆発はありえるのか?


(福島では)今までの爆発は原子炉から放出される水素によって引き起こされている。チェルノブイリでは原子炉内での核爆発があったのかもしれないが、これは確認されていない。



どのような放射能レベルが福島で記録されているのか?


なんと400ミリシーベルト/時が発電所の中で記録されている。この量に数時間当たれば放射能により健康上の問題が生じる。しかし、通常はは1ミリシーベルト/時以下である。(胸部X線検査はおよそ1ミリシーベルトの放射能を放出する。)月曜の朝には放射能レベルはわずか20マイクロシーベルト/時だった。これは旅客ジェット機で経験する放射能レベルの数倍の濃度にしかすぎない。



放射能にさらされても平気なのか?


世界には、自然界にある放射能が普通よりもかなり高い地域がある。たとえばイングランド南西部のコーンウォールのように。それでも、人はコーンウォールに暮らしているし、ほかの地域の人は喜々としてこの地域を訪れる(注:コーンウォールはイングランドの観光地)。同様に、すべての国際飛行便は乗客を通常よりも高いレベルの放射能にさらす。それでも人は飛行機に乗るし、乗務員は多大な時間、放射能にさらされている。病院の患者は定期的にX線検査を受ける。科学者はどんなレベルであれ、放射能にさらされることが完全に安全なものなのか、論争している。しかし、自然界にある放射能が平均的な地域であれ、平均以上の地域であれ、一定の放射能にさらされるのは事実である。



http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12732015