ポップ/ロックのジャンルで最近のバンドに、以前に比べて
‘ブリティッシュらしさ’、‘アメリカンらしさ’、といったお国柄
を感じることが少ない。
インターネットを通して、どの国の音楽だろうと簡単に聴く
ことが出来る時代に生まれて来た人達が作り出すものなの
だから当然なのかもしれない。
例えば特に70年代、海外を旅し、その土地で出会った土着
の音楽のエッセンスを自分の中に取り込み、新たな音楽を
創造していたミュージシャンも多い。
それの疑似体験が自分の家に居ながらにして出来てしまう
現代。
それならば、もっと体験したことのない未知のジャンルと融合
した音楽が出て来ても良さそうなものだが、余りそういう状況
にはなっていない。
むしろ音楽の画一化、平均化が進んでしまったように思える。
良いところ取りしたら結果似たり寄ったりになってしまったのか。
冒険に打って出る変わった人達が報われていないだけなのか。
はたまた、悲しみの‘売れる’理論によってそうなっているのか。
THE CLICK FIVE 4年振り3rdアルバム 『TCV』。
アメリカはボストン出身ながら、極めて‘ブリティッシュな’ポップ/
ロック・バンド。
実際1stや2ndのジャケットなどブリティッシュ・ビート・バンドを
意識していることが伺える。
1st 『Greetings from imrie house』
2nd 『Modern minds and pastimes』
よく練られたメロディーを丁寧なアレンジで、という普通なことを
普通に聴かせてくれる、しかし今時にあっては却ってそれが
新鮮に聴こえるバンド。
今作も一曲目『I quit! I quit! I quit!』のイントロから、すぐに
心を掴んで離さない安心の“THE CLICK FIVE”クオリティー。
ただ今回は1stや2ndとは全く異なるイメージを打ち出してきた
アルバム・ジャケットにも象徴されるように、ほんのりアメリカン
な香りも漂う。
アルバムには
「This record has been
a long, exciting, grueling, and amazing process」
なんて言葉がクレジットの最初に書かれていたりして、かなり
産みの苦しみがあったと思われるが、充分それの成果が出て
いる良いアルバム。
『I quit! I quit! I quit!』
このバンドで一番好きな曲、2ndから 『Jenny』