一番風呂争奪戦(湯楽の里杯) | ゴースケのFighting days

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カレーとボクシングとヌコをこよなく愛する関豪介の日々の叙事ブログ。
たまにボケかますから気をつけろ。

年末に行われたボクシング名勝負の数々に興奮冷めやらぬまま迎えた2015年元日。
私もまた一つの勝負に挑んだ。

4年ぶりとなる一番風呂争奪戦

2010年府中曙湯杯準優勝、そして2011年大塚記念湯杯優勝の実績を引っ提げ参戦した今年の舞台は、自宅から1kmほどのところにある湯楽の里松戸店だ。
多くの銭湯が2日や3日から営業を開始する中、さすがスーパー銭湯ここは元旦から営業している。
つまり湯楽の里杯を制した者は一番風呂中の一番風呂を獲得したと言える。

この特別な大会に4年のブランクは多少不安材料ではあったが今回はホームでのレース。アウェイである記念湯で優勝した経験が少なからず精神的アドバンテージとなっている。


レースは元日恒例のニューイヤー駅伝より更に早い午前8時スタート。
少し余裕を持って7時50分頃に入り口に到着したら既に号砲を待つライバルが十数人。
しかし半数以上が女性であった。ここは女性の競技人口の方が多いらしい。
(過去に参加した2大会ではほとんどが男性だった)

一番風呂争奪戦は男子の部と女子の部に分かれている
もっと大人数でのレースを覚悟していたが少し気持ちが楽になった。


ケータイを見たら7時58分。
そろそろ心の中にどこからともなく

「イチニツイテー」

という声が聞こえてくる。






「ヨーイ」







・・・




(係員)「お待たせしましたー」





―――ついに始まった。






靴を靴箱に入れ階段を上がる。
この時点で2位。なかなかの好スタートを切ることができた。


ふと、階段の上を見ると小走りで横切るロバート秋山のようなおじさんが。



「マジかよッッ!!」



すっかり忘れていた。ここには駐車場から入るもう一つ入り口があることを。
さすがスーパー銭湯、一筋縄ではいかないらしい。


施設内で走るのは厳禁。そんな中、小走りという反則スレスレの荒技をつかう猛者に若干狼狽しつつ平常心を装い受付へ向かう。


「落ち着け。落ち着くんだ。俺は回数券を持っている!


湯楽の里は券売機で入浴券を買ってから受付に見せるシステム。
回数券を用意することにより券を買う手間をショートカットできるのだ。
もちろんタオルも持参している。


よし、ここで一気にトップに出るぞ!


その思いを尻目に前を行く2名とも受付へ直行。
彼らもまた回数券を持っていたのだ。

(今思えば、上位争いに食い込むほどの選手が回数券を持っていない方がおかしい。)


水面下で加速する焦りをぐっと押さえエメリヤエンコ・ヒョードルばりのポーカーフェイスで受付を3位通過。この時点でトップの背中は見えない。


「集中だ、集中しろ!」


男湯の暖簾をくぐるとここからは「脱ぎ」に突入する。
脱ぎは得意分野。ズボン、パンツ、靴下を同時に脱ぐというテクニックを駆使し順位を一つ上げ浴場へ。


「少しはトップとの差は縮まったか」


そう思いながら入り口をあけると目に飛び込んできたのは何と・・・!


露天風呂へ直行する秋山の姿


銭湯ではお湯に入る前に体を洗ってキレイにするのがルール。
反則負けの秋山は戦線を離脱ということで、この時点で暫定トップとなった。


かかり湯をしていると3番手で入ってきたおじさんが


「お兄ちゃん早いね~、俺が一番かと思ったんだけどねぇ(^-^)」


と話しかけてきた。

自転車の長距離レースは長時間の孤独な戦いである故に、たとえ敵であってもレース中選手同士で他愛もない会話が交わされることがよくあるという。
このおじさんも数々のレースを経験してきているに違いない。


「おはようございますー。いやぁ、もっと早い人いますけどね(笑)」


この人と一騎打ちの優勝争いになりそうだな、
そう思いながら返事を返し「洗い」に取り掛かろうとした矢先、なんとそのおじさんも露天の方へ。


トップ独走状態となる。

少し物寂しさを感じながら頭と体を洗っていると、後から入ってきた高倉健に似た人もまた直接湯船へ。


「健さんともあろうお方が・・・」


おそらく不器用だったのであろう。
一番風呂という栄冠を前に自己をコントロールできなかったに違いない。


「なんだここは。反則技のバーゲンセールか!」


そういうモヤモヤを抱えつつ「洗い」の全行程を終え湯へ。
二度目の一番風呂争奪戦優勝を果たした。


しかしなんだこの感覚は。嬉しいはずなのに嬉しくない。一番風呂であって一番風呂ではない。
なんだか複雑な気持ちだ。

ふと、シドニーオリンピック男子水泳で他の選手が皆フライングしたことにより一人で泳いだ、エリック・ムサンバニ(ギニア代表)の姿が脳裏に蘇る。


そんな感情もしばらくお湯に浸かっていればバブルの泡がやさしくほぐしてくれた。
やはり朝風呂は気持ちがいい。

そこだけは揺るぎない事実なのである。