最近、渡辺惣樹さんなどの著作でフランクリン・ルーズベルト大統領の実像が明らかになっているが、アメリカ人自身が戦争直後から既に問題視していたことが分かる本が2017年時点でも出版されている。しかしこの本も発表当時、アメリカ国内ではタブー視されてか読み広がってはいなかったようで、すでにリベラル勢力の萌芽が見られるのであろうか。

(以下読書日記)

以前から読もうとは思っていた本だったけど、何となく内容は分かっているつもりで繰り延べしていた。しかし、たまたま「戦争を始めるのは誰か」に続けて読んだことで、関係性も強く印象つけられてよく分かった。

これは1976年ごろ、アメリカで刊行された本、第二次世界大戦前からアメリカの外交とルーズベルトの人となりを知り尽くした有力下院議員フィッシュによって語られる、アメリカ国民すべてがルーズベルトに騙された大恐慌時代から第二次世界大戦中、そして戦後の真実である。

まずルーズベルトは権力志向の塊であり、死ぬまで一旦手に入れた権力を放すことを拒み、とても執務に耐えぬような病状を隠して、四選を戦い、もっと言うと三選時に既に執務にフルに耐えることも叶わぬなかで大統領になった、という。そしてアメリカ大統領の権力にとどまらず、ひょっとしたら世界の大統領を望んだのか、国際連合の設立とそのトップを目指して、自分が気を許すスターリンの協力を得るために、最大限のサポートを戦前、戦中、戦後も与えて、結果として不必要だった第二次世界大戦を起こし、またドイツを倒すことでソビエトに中央から東ヨーロッパを与え、更にはアジアでも中国の共産化を許し、それが朝鮮戦争、ベトナム戦争につながってアメリカ人の血をも流させることになった、と徹底的に非難する。

「戦争を始めるのは誰か」でもなぜ、ポーランドがあれほどドイツとの外交的妥協を拒んで結果的に大戦を引き起こし、全てを失ったか、でその裏にはイギリスがいたとあったが、さらにその裏にアメリカがいた、とするのがフィッシュである。住民の9割がドイツ民族であったダンツィヒを譲ればヒトラーは満足して東に向かい、ソビエトと死闘を始める、それによってヨーロッパは安泰であったはず、という。それなのにイギリスはドイツに対抗する陸軍など無い中でポーランドに自由を保障し、アメリカの参戦も約されたお蔭でベック外務大臣は強硬路線を継承した、実は彼も妥協したかったのに、とある。さらにドイツのポーランド侵攻の直前にフィッシュたちはヨーロッパの議員たちと共同声明を出してモラトリアムを提案することにしていたのだが、その構想もアメリカ政府のサポートなく潰えてしまった、と明かす。さらに戦争中の1943年にもドイツ国内の反ヒトラー勢力から名誉ある降伏を打診されながらもFDRに無視されてしまった事実を明かす。

フィッシュは日本がアメリカと戦うつもりはなく、最大限の譲歩をしていたこと、最後通告(ハルノート)はアメリカから提出されたこと、その事実を国民も議員もまるで知らなかったことなどを明かし、これもFDRが参戦するために弄した手段であると非難する。FDRは国民に対して嘘をつくことも全く気にせず、平気で反対を言い、国民をだました。ポーランド系も騙し、ユダヤ系も騙し、もちろんドイツ系のことも考えずにいた。ただ、共産主義だけを自分は共産主義者ではないのに信じた、という。これも実に不思議で、なぜなのか不明。

FDRの中国好きは有名であったが、それなのに蒋介石を途中で裏切り、毛沢東=共産主義に肩入れしたと言うがこの理由も不明。この本ではマーシャル将軍もただのFDRの腰ぎんちゃくという評価で、「史上最大の決断」という本での評価と違う。多くの見方があると言うことだろう。

それにしてもこれだけはっきりFDRの問題が語られているのに、なぜ、アメリカで、また日本で主流の考えにならず、未だにFDR神話が続いているのはなぜだろうか。本当に得をしたのか誰なのか?スターリンが得をしたと言ってもソ連、ロシア民族は多くの死者を出したし、それは中国も同じ。アメリカももちろんそうだし、ユダヤ人も戦争さえ起きなければアウシュビッツもなかったはず。

ただ、国際金融資本(多くはユダヤ系だろう)だけはアメリカの潜在能力を解き放ち、そこで大儲けをした、と言えるかもしれない。ソビエトを製造基地にできたかもしれないし(スターリンがもっと大人しければ)、中国も早めにそうできたかもしれない。しかし、毛沢東により中国もアメリカの脅威にまで成長したので、待つ必要ができた。今では中国は国際金融資本の勢力下にある、と言ってもいいのかもしれない。日本の欠点は国際金融資本の言いなりにならなかった(ハリマンの満州鉄道参入を断るなど、相手のメリットを理解したうえで一緒に儲けよう、という気持ちがなかった、外交、金融音痴の日本、ということか)ということであろう。

フィッシュは、アメリカは長い間日本に経済制裁を掛けることで挑発していた。真珠湾も日本の奇襲ではない、最後通牒をしたのもアメリカだし、暗号解読によって攻撃も知っていた、という。ここだけでも日本人は認識すべきであろう。それにしてもFDRとチャーチルさえいなければ、世界はまるで変わった、というのは壮大なIFとして記憶すべきことではないか。

この本を読み終えて考えるに、アメリカ人がヨーロッパへの二度の介入をつくづく馬鹿なこととして認識した結果、三度目の介入はしない、と決めたとすると、日本を守って中国や北朝鮮とも対峙しない、と割り切る恐れもある、日本も尖閣諸島くらいで中国と徹底的に戦うべきではない、妥協すべき、と言う流れになりかねない、そんな恐怖もちょっと感じた。

(読書日記終わり)

現時点ではトランプもバイデンも尖閣諸島は日米安保始動の対象になる、と表明しているが、いざというとき本当にそうなのか、日本政府もちゃんとプランBを考えているはず、だと信じたい。