案の定、いそうなところにやっぱり―――いた。
入りにくいが・・・瑠子がいるんだ。
ガチャッ
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
ドアを開けると、第一声が必ず決まっている。
―――メイド喫茶だ。
店内を見渡すと、猫を抱いて窓側の机に突っ伏していた。
「・・・・・・瑠子?」
優しく呼んでみる。
瑠子の肩がびくっと振るえ、猫の耳がぴくっと動いた。
「あのさ・・・さっきは急にあんなこと言ってごめん。 ―――本当に、ごめんな。」
このまま無視され続けるのだろうか。
そう思ったとき、
「い、いいよ。 気にしてないから! こんなことでめげても仕方ないもんね! ・・・もう、慣れてるし、さ。」
まただ。
相当応えている筈なのに、また無理をしていつもの口調にしている。
やめてくれ。
涙が溜まっている瞳で、無理をするな。
そう思い始めたとき、体が勝手に動いていた。
「―――――・・・え?」
瑠子は見上げてくる。
俺は瑠子に―――抱きついていた。
優しく、包み込むように。
「お願いだから無理をしないでくれ。 泣きたいときは泣け。 ・・・・・・俺が、その涙を受け止めてやる。」
「光・・・。」
瑠子は言葉を発しようと口を開く。
だが、
「お客様・・・。 当店ではリア充は禁止となっておりますので。」
従業員(メイド)に遮られた。
空気が読めないにもほどがある。
その前に、リア充ってなんだ。
瑠子が使うネット用語ってやつか?
「こ、光! とりえず外出よ!」
瑠子の言葉で我に返り、店内を見渡す。
従業員に声をかけられたからか、他の客も俺たちに気付き始めたようだ。
瑠子に連れられ、店の外へと出て行った。
―――――のだが。
瑠子はずっと黙ったまま歩き続けている。
「お、おい瑠子・・・。」
呼びかけてみると、すんなりと振り向いてくれた。
「なに?」
「あ、あの・・・さっきの・・・」
するとふぅっと大げさに溜息をついた。
「もー・・・。 光は告り方がベタだなぁ。」
「・・・え?」
告白という告白をしたつもりはないのだが・・。
まぁいい、のかな?
「嫌・・・?」
「い、いや! そんなことはない!」
「良かったぁー!」
そう言って地面に座り込む。
俺の脳内は『?』で埋め尽くされていた。
「だってさ! 未来も光のこと好きだったんだよ! 奪われたらどうしようかと・・・。」
「は!? あの未来がか?」
「うん。 綾は面倒くさいから恋愛は気が向いたらって言ってたし、みーたんはあの通り天然だし・・・。」
「そ、そうだったのか・・・。」
なんだか、未来には申し訳ないな。
「未来には女同士で話しとく。 それじゃ、めでたく付き合えたところで、帰りますか!」
携帯を覗くと、もう18時を回っていた。
「・・・そうだな。 帰ろうか。」
俺が足を踏み出すと、
「ん」
という声と共に、瑠子の手が差し出された。
手・・・手・・・手・・・?
もう手を繋ぐのか!?
「段階段階!」
瑠子の声と共に手を差し出す。
「ふふ、今日が瑠子と光の初リア充日だね!」
手を繋ぐと、今まで以上に可愛らしい笑顔を見せてきた。
この笑顔を大切にしたいと、―――守りたいと、切に思った。
「・・・そうだな。」
「光、絶対リア充知らないでしょー!」
帰りがてら、意味を聞いてやるか。
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ええと、昨日公開したものがもう既に更新してあったものでして・・・すいませんでした;;
苦労して打ったものが・・・あああ・°・(ノД`)・°・
そしてですね、無事に瑠子と光の物語が完結しました!
次は童話風物語を更新しようかな、と・・・。
もしかしたら、ニャンニャン探しの番外編もあるかもです!
お楽しみにぃ≧(´▽`)≦
