三菱航空機はコンコルドの誤りだけには陥るな
1970年代、音速の倍を超える巡航速度を誇る英仏共同開発の超音速旅客機コンコルドが就航しています。その名は、航空史だけでなく経営論でも残されています。ただ、後者は「誤り」という言葉とセットです。
「コンコルドの誤り」とは、過去に投じた資金や労力を惜しんで将来損失が見込まれる事業を止められないことを意味します。環境問題や航空需要の変化で採算が獲れないとわかっていながら、巨費を投じたコンコルド開発が進められたからです。
先日、国産初のジェット旅客機として話題と期待を集めてきた三菱航空機のスペースジェットの開発費の大部分が削減され、開発は凍結されることになったと伝えられています。
まさに、「コンコルドの誤り」という不吉な言葉も思い起こされるコロナ禍下での旅客機開発の成り行きです。
スペースジェットは、初号機が2013年に納入予定だったジェット旅客機です。しかし、欧米の安全基準を満たす「型式証明」の取得に多数の設計変更が必要となり、6度も納期延期を重ねてきています。
コロナ禍は、その試験機が完成した直後に襲来しています。
先日は、同ジェットの納入予定先のANAの5000億円規模の赤字見通しが報じられています。
コロナ禍で、今年の世界の航空需要は大幅減といった有様です。回復には、4年程度かかると予測されています。
三菱航空機は将来の開発再開を強調していますが、新型機の需要見通しの厳しいことは誰にでもわかります。経営陣は、「コンコルドの誤り」という事態だけは避けたいところでしょう。