退化して〝サル化〟する現代人 | 八丁堀のオッサン「同時代をポップに『切り裂く』」ブログ

退化して〝サル化〟する現代人

 現代人は、「ヒトからサルに退化している」という指摘があります。それは今の自分さえ良ければそれでいいという考えしかできず、未来の自分にツケを回しても気にならないという〝人種〟が増えているということの指摘です。
 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための外出自粛にしても、相変わらず欲望を抑えられずに自分勝手な行動をする人が絶えません。
 こうした行動の結果、感染拡大が進み、経済が停滞することで自分が〝就職氷河期〟の洗礼を受けることになるということを想像できないのです。
 こうした〝サル化〟した人は、長い時間に渡って自己同一性を維持することができません。しかも、「過去」「現在」「未来」に渡る時間の流れのなかに自分を位置づけることができないから、確率や蓋然性、矛盾律、因果といった概念が持てないのです。
 時間の概念、意識が痩せ細った人は、長いタイムスパンのなかで物事の適否を判断できなくなります。つまり、人類は今、再びサルに退化し始めている人が増えているという〝文明史的な危機〟に瀕しているのです。
 過去と未来を含んだ視点で「今」を考察する力が急速に失われてきた最大の原因は、基幹産業が農業から製造業、さらに高次のIT産業などに変遷してきたことです。
 たとえば農業の場合、農民は植物的な時間に準拠して暮らしていました。種子をまいている自分、風水害や病虫害を防いでいる自分、収穫している自分が同一の自己であるという確信がないと日々の労働には耐えられません。
 しかし今、最下層の賃金労働者は今月の給与を貰っている自分より先の自分には同一性を持つことができません。なぜなら、1か月後に自分がどうなっているかさえ予測がつかないからです。
 これは、意外かもしれませんが投資家を初めとした富裕層も同じような思考パターンで行動しています。たとえば株の取引はマイクロセコンド単位で行われていますが、それ以上、タイムスパンを広げても意味がないからです。
 このように、人は長い時間の流れのなかに自分の身を置いて何が最善の選択なのかを熟慮するという習慣を久しく失っています。
 それが一番わかりやすいのは、「嘘をつくことに罪の意識がなくなっている」ということです。
「正直は長い目で見ると引き合う」という諺がありますが、逆に「嘘をつくほうが短期的には引き合う」という見方もあります。
 そして短期的な損得だけを考えると、多くの場合、嘘をつくほうが現代社会では利益が大きいのです。
 その証拠に政治家や官僚たちが直ぐにばれるような嘘をつき、前後が矛盾するようなことを平気で言い、その矛盾を指摘されても別に困惑する様子もないのは、彼らが〝矛盾の武器商人〟と同じレベルにまで退化しているからです。
 つまり、思考が〝サル化〟しているのです。その場その場で自己利益が最大化することを優先させ、自分の言明をできるだけ長く維持することには特段の意味を感じていないのです。
 新型コロナウイルスの感染拡大との戦いは、こうした〝サル化〟した現代人との戦いでもあるのです。