光のお父さん/MBS | 読んだり観たり聴いたりしたもの

光のお父さん/MBS

全7話を観終わった。打ち切りかと思ったら当初から7話の予定だったらしい。

 

第1話を見た時にグッと来た、凄い!面白い!という印象はどんどん薄れていったけど、まあ、最後まで何とか見れたかな、という所か。そこそこは楽しかったし楽しみだった。

 

うちら夫婦にとっては、このドラマの現実パートは不要だった。ゲーム世界に誘われたお父さんとそれを導く息子の、そのゲーム世界での細々を、ネチネチと描いて欲しかった。そもそもゲームすらやり付けてない初老の男性がいきなりネトゲに挑戦したのだ。右も左も分からない、何をして良いかも分からない、そこからコツコツと学び、行動が、世界が広がっていく様を描いて欲しかった。

現実世界でのマイディーの成長とか類比とか、そんな物はどうでも良いのだ。

愛してやまないエオルゼアの世界と言うのなら、その素晴らしさとやらを畳み掛けるように浴びせるように伝えて欲しかった。ひと言でいうと薄かった。一人の男性が、人生の意味を見いだし、手術をして病に挑戦する決意を生み出すほどの幸福がそこにあった、数ヶ月の濃密なゲーム体験がそこにあったという、その説得力が感じられない。7回通して見た印象では、ゲームシーンがバラバラで、かつそもそも少なくて、精々十数時間ゲームしていた程度に思えてしまうからだ。

 

あと、ゲームパートの絵は素晴らしいものがあったが、一方で現実パートは、表現的にも今ひとつだった。リアリティの薄さはもう何度も指摘した。

 

ターゲットが曖昧だったのでは無いだろうか。現実パートの厚さを思えば、ゲームに全く興味のない一般を狙ったようにも思う。しかし、その割には、MMORPG自体の説明がほとんど無かった。ベースストーリーや、基本的なシステムの説明すら無く、曖昧なままで進んでいくのは気持ちが悪かった。例えば、毎回出てくるエオルゼアとは何かすら説明が無い訳だ。それは惑星の名前なのか、世界の名前なのか、大陸の名前なのか、それとも国の名前なのか?インディさんが今いる街の名前は何なのか?なぜ最初そこにいるのか?マイディー達が集っていた家は何なのか?誰かの持ち物なのか?家が建てられるのか?世界を治めているのは誰なのか?危機が迫っているのか?ここは人間の世界なのか?どんな種族がいるのか?などなど、さっぱり何も分からないまま説明されないままだ。こんな状態で引き込まれろ、という方が無理があるだろう。もしくは、こうした「常識」なんて説明するまでも無い、FF14プレイヤーに向けたドラマだった、ということだろうか。

私達夫婦のように、ゲームは大好きだけどFF14の事は何も知らない、というような層は、結構歯がゆい思いをしたのでは無いだろうか。

 

お父さんがゲーム頑張っているシーンは楽しかったし、ゲームとは人生に大きな楽しみを与えるものなんだというテーマは素晴らしいと思う。クリスタルのテーマが流れるだけでグッと来るようなゲーマーとしては、見て良かったと思うし、楽しめた部分も多かった。

ただ、単なる一ドラマとして評価するなら、表現(特に現実パートの)も構成も技術も今ひとつだったと言わざるを得ないだろう。

そして、ゲーマーだからこそ、そのゲーム部分の薄さを非常に惜しむ、そんなドラマだった。

 

「光のお父さん」