人工知能のための哲学塾/三宅陽一郎
ゲームAI開発者として名高い著者が主催した連夜形式セミナーの講義を書籍化。大変興味深く面白かった。
タイトルからも分かるとおり、ゲーム上の実装のあれこれでは無く、もっと根源的な、そもそも知能とは何かという哲学的議論を分析し、そこからようやく人工知能への橋を掛けようという橋梁工事が展開される。著者のお仕事はゲームAIの開発なので、ゲームに関する言及もチロチロとは出てくるが、とくに具体的な物は無い。
本書のキモとなるのは、これまでは還元主義的な機械論をベースにしたロジックで組まれていたAIを、現象論的ベースで構築していくべきであろう、という様な方向である。その過程で、記号論や構造主義、身体性なども議論する。
人工知能自体の議論としては大変面白いが、ゲーム用途には直接有効利用が難しそうだ。ゲームAIはリソースが貧弱だもの。つまり、そこでの最大のポイントはコスパだろう。だから、どう人工知能を作るかではなく、いかに、まるで人工知能が搭載されているかのようなAIを作るか、という観点から、こうした議論をどう折りたたんで行くかのポイントに大変興味がある。
- 三宅陽一郎
- 人工知能のための哲学塾