協力がつくる社会 ペンギンとリヴァイアサン/Y・ベンクラー/山形浩生 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

協力がつくる社会 ペンギンとリヴァイアサン/Y・ベンクラー/山形浩生

古来より経済学や哲学が取ってきた立場、つまり、人とは利己的な目的にむかって合理的に行動する存在だ、という現実とは齟齬のある前提に異を唱え、「協力」というメカニズムに焦点を絞り、社会や組織の構成原理として活用すべく解説した本。

 

利己の象徴としてリヴァイアサン、協力プロジェクトの象徴してリナックスのペンギンをタイトルに充てている。

 

大半は読みやすいが、訳者が巻末でまとめているように、あれっと思う点も少なくない。

利己性だけを持った人形のように人は単純では無いと説く著者に向かって、さらに、そんな単純な「協力」だけで人は判断できるものでは無い、と突っ込みたくなる本だ。

 

最大の焦点は、協力か利己なのか、という判断が実に難しいという所だろう。一見利己的に見えて、実は協力的な構造があり、さらによくよく調べると結局は利己的な行動の集合、という様なケースもあって、行動や意思などをどのレベルまで分析するかに掛かっている状況も少なくない。実験室レベルでは単純化できるように見えて、やはり、そこには心理学実験を受けている自分という微妙なシチュエーションがあり、その判断には注意が必要だし、もちろんのこと直ちに実社会の行動に敷衍できるものでは無い。

 

結局定義の問題なので、学術的には全てを利己的と評してスタートしても問題ないと個人的には思う。そして、著者が問題にする哲学や経済学での齟齬は、単に、モデルが粗かった、という評価にとどまるであろう。

 

ただし、本書を読むことで論点の整理には役立つだろう。

とくに、フレーミングや共感などの知見は、ビジネスなどには直ちに応用できる筈だ。

 

Y・ベンクラー/山形浩生
協力がつくる社会 ペンギンとリヴァイアサン