ハケンアニメ!/辻村深月 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

ハケンアニメ!/辻村深月

タイトルは以前から認識しており、図書館の書架で見かけた時に、おっと思って手に取った。アニメ業界の話、という事だけは知っていた。以前読んだ、ドラえもんを核にした「凍りのくじら」の著者であるので、なるほど、アニメ漫画には造詣の深い著者ならではの作品なのだろうと興味を持っていたのだ。ただ、今ネットでちらと調べた限りではそれほどマニアというわけでもないようだ。

 

さて、このタイトルである。ハケンと来てアニメ業界小説と聞けば、過酷な労働環境をテーマにした小説に違いないと早合点しても無理は無いだろう。しかし、これは、「覇権」の事だった。アニメファン業界では当然の用語らしいのだが、その節のシリーズアニメのうち、放送後もっともDVD売上げを挙げた作品を讃えて「覇権アニメ」と称するのが狭義らしい。知らんがな。まあネットでは一般用語なのだろう。本作は「覇権」を狙う若者達の熱くて爽やかなお話であったが、ドロドロブラックなハケン労働の方も読んでみたかったなあ。しかし、それならハケンでは無く、バイトや請負などになるだろうしこの言葉は違うか。

 

上にも書いたように、読後感は、スッキリ爽やか。若者が夢を追って頑張る業界小説として、アニメファンにもファンで無い人にもまんべんなく勧められるエンタテインメントである。プロデューサー、監督、アニメーターと、結局良い人しかいない世界に配された3人の女性主人公も、彼女らを適切にサポートする男性陣も、anan連載という経緯を踏まえた上手い構成だろう。

 

ただ、それだけに、タイトルにもある「ハケン」至上主義の業界構造と、それを若さ故の情熱でうまく覆い隠して見て見ない振り、といった地に足の付きすぎている女性誌らしいリアリティの落とし所が、長所でもあり短所でもあると思った。如何せん綺麗すぎるのだ。

 

世の中との隔絶を強く意識する主人公が、きっかけを掴んでそれと向き合い、やがて世界に自分の居場所を見つける、というポイントが、どうやら著者の持ちテーマらしいと、前著から読んで感じた。

特に若年層にはフックしやすいのでは。

過分に伏線を張ってドミノ展開で盛り上げるミステリ調の終盤構成も著者の十八番だろう。

ただ、本作に限っては、若干無理構成が目立つような…。初対面時に副理事長の名前を聞かないとかあり得ないでしょう。もっとエンタメ色を抜いて、落としたトーンで流しても味が出たと思う。

 

ゲームファンでもあるらしいので、同じような構成でゲーム業界も斬って欲しい所。

 

辻村深月
ハケンアニメ!