異端の数ゼロ 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念/C・サイフェ/林大 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

異端の数ゼロ 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念/C・サイフェ/林大

ゼロ。
数学の最も重要な礎の一つであり、現代社会と科学の全てを支える数字。
しかし、人類はその数的概念を操る能力の獲得と共に自然にこの数字を見いだしたわけでは無い。人々がゼロという数字を「発見」するには、意外なほど長い時間を要し、近代になるまで待たねばならなかった。
なぜならゼロは危険な数字、つまりは危険な概念だったからだ。いや、過去形では無い。現代の最先端科学や数学においても、ゼロは危険な概念であり続けている。
ゼロ、無限小、無限大。こうした人智を越えた概念の扱いは、そもそも人間の脳の性能を超えており、所詮は人はそれらを完全には理解し得ないのだ。
しかしそれでも人は、盲人が像の理解に挑むがごとく、遅々たる歩みでゼロに挑んできたのだ。
本書は、そうした英知の建造の歴史を、その構造と問題点を分かりやすく示しながら解説したものである。
豊富なエピソードとウィットに富んだ文体で物語として実に読みやすいし、あくまで一般向けとして些末をオミットしテーマを絞ってほどよい分量にまとめた印象。
個人的には終盤のカシミール効果が懐かしかったな。
最近、自然数の無限和(1+2+3+4+…)をラマヌジャン的方法で計算すると-1/12になる事から、カシミール力の存在とその向きが引力である(マイナスだから)事を示した記事を読んでいたので、余計に印象深かった。

C・サイフェ/林大
異端の数ゼロ 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念