先週読んだ漫画 14/09/28-10/04
●花のズボラ飯/久住昌之/水沢悦子

良い書評を多数見て、いつか読みたいと思っていた。職場に転がっていたので拾って読む。
はっきりと読者を選ぶ漫画だろう。この作品はタイトルから連想させるイメージとかなり違う。すごく手抜きな食材やズボラな調理法でも、あっと驚くおいしい料理が出来ちゃう!といったグルメ漫画では「決して」無い。料理だけでは無く、主人公のハナ自体がズボラなのである。ハナは夫が単身赴任の留守宅を預かるパート主婦であるが、独り身の気楽さから、部屋中ゴミが転がり、洗濯物は脱ぎ散らかされ、本や雑誌は積み上がり、食卓は仮置きの雑物が占拠する状態だ。面倒だと風呂に入らずソファーでうたた寝。真夏の休日にはクーラーの効いた室内で昼まで寝た後、お菓子を食べてさらに昼寝。ブラをハズしたTシャツにパンツ一丁の姿でゴロゴロするのがお気に入りだ。そんな、ズボラなハナがズボラに飯を食う、というそれだけの漫画なのである。その飯にしても、ジャーに残った昨日のご飯で卵かけご飯と出来合いの柴漬けとか、3日目のカレーとか、鮭フレークのせトーストとか、ふりかけご飯とか、実にズボラ感満載だ。
この漫画のポイントは、いくつかあると思うが、ひとつは、欲求と代償だろう。メニューの内実とは裏腹に実に官能的に描かれたその食餌シーンの描写は、一人きりの寂しい生活で昂じた欲求が、三大欲求のもう1辺である食欲に奔流したと思えるほどだ(もちろん睡眠にも注がれている)。そして、その食餌の際の、繰り返されるダジャレやギャグや一人実況、一人ボケ突っ込みなどの、堰を切ったかのような独白台詞の数々も、そうしたハナの心境を切々と物語っているようで涙を誘う。日本人の中底辺層をモデルとしたハナには、夢も希望も無く、自らの暮らしを律する意思もなく、かといって不幸でも無く、夫のゴロを待ちながら、張りの無い暮らしが埃のように積もってゆく中ただただ膝を抱えているだけである。しかし、そんな生活の中でも、自らエサと表現するような侘びしい食餌に、自身の存在をその一点に賭けたかのような喜悦を見いだす人間の動物性はどうだ。幸せを見つけてしまえる人間の強さ。そして、そうした強さを持ってしまった故の弱さが余す事無く表現されているだろう。
しかし、そうしたメタな視点を持たなければ、ハナの心情に非常に共感できるという人を除けば、単に幼児的でだらしない女が不衛生で屑のような食餌を下品に食べる、というだけの漫画に過ぎないだろう。ネットでもそうした観点からの酷評が多い。下手に書評等で持ち上げられたため読まなくても良い人が大挙して読んだ結果だろう。
ちなみに、仕事で個人宅を数多く訪問した経験からいうと、ハナの家の汚れ具合乱雑具合は中の下程度であろう。散らかっている事を本人が意識しているだけましである。下には下がある。上がる際に靴を脱ぐのを躊躇するような家を何軒も見てきたものだ。まあ、この漫画ではそうした細部は省略されているだけかも知れないが。
私は、ハナには全く共感できないし、魅力も感じないが、眺めている分には実に味があると思う。2巻もあるようなので機会があれば。
良い書評を多数見て、いつか読みたいと思っていた。職場に転がっていたので拾って読む。
はっきりと読者を選ぶ漫画だろう。この作品はタイトルから連想させるイメージとかなり違う。すごく手抜きな食材やズボラな調理法でも、あっと驚くおいしい料理が出来ちゃう!といったグルメ漫画では「決して」無い。料理だけでは無く、主人公のハナ自体がズボラなのである。ハナは夫が単身赴任の留守宅を預かるパート主婦であるが、独り身の気楽さから、部屋中ゴミが転がり、洗濯物は脱ぎ散らかされ、本や雑誌は積み上がり、食卓は仮置きの雑物が占拠する状態だ。面倒だと風呂に入らずソファーでうたた寝。真夏の休日にはクーラーの効いた室内で昼まで寝た後、お菓子を食べてさらに昼寝。ブラをハズしたTシャツにパンツ一丁の姿でゴロゴロするのがお気に入りだ。そんな、ズボラなハナがズボラに飯を食う、というそれだけの漫画なのである。その飯にしても、ジャーに残った昨日のご飯で卵かけご飯と出来合いの柴漬けとか、3日目のカレーとか、鮭フレークのせトーストとか、ふりかけご飯とか、実にズボラ感満載だ。
この漫画のポイントは、いくつかあると思うが、ひとつは、欲求と代償だろう。メニューの内実とは裏腹に実に官能的に描かれたその食餌シーンの描写は、一人きりの寂しい生活で昂じた欲求が、三大欲求のもう1辺である食欲に奔流したと思えるほどだ(もちろん睡眠にも注がれている)。そして、その食餌の際の、繰り返されるダジャレやギャグや一人実況、一人ボケ突っ込みなどの、堰を切ったかのような独白台詞の数々も、そうしたハナの心境を切々と物語っているようで涙を誘う。日本人の中底辺層をモデルとしたハナには、夢も希望も無く、自らの暮らしを律する意思もなく、かといって不幸でも無く、夫のゴロを待ちながら、張りの無い暮らしが埃のように積もってゆく中ただただ膝を抱えているだけである。しかし、そんな生活の中でも、自らエサと表現するような侘びしい食餌に、自身の存在をその一点に賭けたかのような喜悦を見いだす人間の動物性はどうだ。幸せを見つけてしまえる人間の強さ。そして、そうした強さを持ってしまった故の弱さが余す事無く表現されているだろう。
しかし、そうしたメタな視点を持たなければ、ハナの心情に非常に共感できるという人を除けば、単に幼児的でだらしない女が不衛生で屑のような食餌を下品に食べる、というだけの漫画に過ぎないだろう。ネットでもそうした観点からの酷評が多い。下手に書評等で持ち上げられたため読まなくても良い人が大挙して読んだ結果だろう。
ちなみに、仕事で個人宅を数多く訪問した経験からいうと、ハナの家の汚れ具合乱雑具合は中の下程度であろう。散らかっている事を本人が意識しているだけましである。下には下がある。上がる際に靴を脱ぐのを躊躇するような家を何軒も見てきたものだ。まあ、この漫画ではそうした細部は省略されているだけかも知れないが。
私は、ハナには全く共感できないし、魅力も感じないが、眺めている分には実に味があると思う。2巻もあるようなので機会があれば。