スカル・ブレーカ&フォグ・ハイダ/森博嗣 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

スカル・ブレーカ&フォグ・ハイダ/森博嗣

ヴォイド・シェイパシリーズの3巻と4巻一気読み。
例によっての森節時代劇で、思索的剣豪小説と言えば格好いいが、平たく言えば、頭でっかちの世間知らずがうじうじ悩みながら斬り合いをする長編小説である。
スカイ・クロラのドッグファイトを斬り合いに置き換えたと思えば間違いない。

決して面白くないわけではないし、嫌いなわけではないが、じゃあ積極的に好きかと問われれば、快く首肯できない何かがある。それはやはり、第1巻のヴォイド・シェイパのエントリでも書いたとおり、文体と世界観のギャップから来る違和感に、どうしても馴染めないためだろう。
まあ、頭が固いと言われればそれまでの話である。頭の柔らかい人にはエンタテインメントとして大変お勧めだ。
この小説のポイントはいくつかあるが、まず第一は、なんと言っても殺陣のシーン。息詰まる個人戦闘の描写は森さんの十八番だ。ただし、今回の描写も上質ながら、ベストというなら第2巻のブラッド・スクーパの方が5割増しに凄みがあるだろう。
第2のポイントは、だらだらとした哲学的思索。剣で人を殺す技術を極める道とは何ぞや?そもそも人が生きるとは何ぞや?という主人公ゼンがはまっている落とし穴に一緒に飛び込むのもまた一興だ。
第3のポイントは、ノギや他の仲間達とのほのぼの交流。ノギの存在感が増してきた。4巻で見せた確固とした芯には感嘆。ずっとノギ=ナナシ説を内心暖めていたが、これは外れだったかな。

ストーリーは、まあおまけ程度だ。ゼンの出自が徐々につまびらかにされてゆくが、まあ、大方の予想通りだろう。
ゼンを始め登場人物が皆物わかりが良すぎる上品テイストなのは、短所でありまた長所でもある。
詰まるところ、人は、おのおの好きな事をするしかない、例えそれが人を殺す事であっても、という真理だけが残る。いくら理屈を付けようとしても、結局、真剣で斬り合い殺し合う瞬間の快感、自らの技の全てをつぎ込み、切っ先が描く筋を支配する快感から、ゼンは逃れる事は出来ないのだ。人がどう生きるべきか、という様な指針はない。あるのは、人がどう生きたか、という結果だけである。
そのことに半分気づき、半分は得心していないゼンの旅路はまだ長いだろう。
と、4巻完結かと思っていたら全然終わった印象がないので調べてみると、まだまだ続きそうである。引退宣言をしたワリには森さんもマメな事で。

そうそう、3巻スカル・ブレーカの装丁は、何だこれ。綺麗な紅葉写真をあしらっているのは良いが、細い黒文字で書かれた背のタイトルが、模様に紛れて全く読めないじゃないか。どんなにキレイでも、タイトルが読めない装丁では、デザイン以前の問題だ。これではデザイナ失格だろう。猛省されたい。下の写真では白地になっているように見えるが、これは帯である。

森博嗣
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