ちはやふる/末次由紀
さあさあ、積み本の中から、満を持しての真打ち登場。
世間での評判は当然知っている。マンガ大賞受賞。最新刊は毎回ランキングトップ。
先行した妻の評価もすこぶる良い。
これでもかっ、という程に期待を込めて読み始めた。
すごい面白い。
取り敢えず、職場でゲットした6巻は一瞬で読み切った。たった今、2周目を読み終わった所である。
読んでいて一番しみじみと伝わってくるのは、作者がどんだけマンガが好きなのか、という事なのである。情熱である。主人公よりも、どんなキャラよりも、作者のこの情熱が、実に気持ちよく届いて、それがこのマンガを読んだ時に感じる、どこか胸のすく感じ、無条件の安心感、何とも言えない暖かな空気、などに繋がっているのだと思う。そんな印象が第一に来る。
マイナーな、競技かるたを題材にした物語である。かるたに魅せられた少女が、少年が、かるたに青春の全てを懸ける、もう100%スポ根マンガで間違いない。
主人公の綾瀬千早は、小学校の同じクラスに転校してきた少年が気にかかっていた。福井なまりで周りから浮いたその少年、綿谷新(あらた)と関わるうち、かるた名人になるという新の夢を打ち明けられる。対戦した新は強かった。新の祖父はかるた永世名人。新も全国学年別の優勝者だったのだ。しかし、千早はそんな新に本気で向かって行き、しかも1枚を取る事ができた。かるたの面白さ、そして情熱もつ事、すなわち本当の意味での「夢」を教えられた千早だった。
千早は、新はかるたなら誰にも負けないといじめっ子連中に啖呵を切る。その言葉通り校内かるた大会で、新は圧倒的な力を見せつける。千早と仲がよいがいじめの中核だった真島太一は決勝で新とまみえる。医者一家に生まれ、敗北を許さない厳格な父母の元、絶対に負けられない太一は、新のメガネを隠してしまう。札が見えない新は暗記力を頼りに善戦するが、やはり後半だんだん苦しくなってくる。見かねた千早が新の代打に立ち、直感的に理解したかるたの戦い方を武器に、太一との激闘を制す。
すっかりかるたの魅力に取り憑かれた千早。千早に引っ張られ、新への牽制で、かるたに付き合う事となった太一。はじめは本気でなかった太一も、競技の中で力を出し、それを認められる事で、かるたの魅力を理解し、そして新への友情が芽生えていった。
しかし、小学6年生は別れの時でもある。太一は遠くの名門中学へ進学が決まり、祖父が倒れた新は福井に戻る事になった。三人チームで出場しようと約束し楽しみにしていた大会も、もう出ないと泣く千早。
かるはた楽しい。でも、仲間がいるから、楽しいのである。一人になるのなら、かるたなんて楽しくない。
新と太一にも事情はある。チームTシャツを造って届けてくれた、二人の気持ち。千早は、二人の後を追い大会に駆け込む。寂しいのは二人も同じなんだ。だから大会は初めてだけど、絶対に勝つ。良い線まで行ったものの、結果として負けてしまったけれど、友情をその場に刻む想いで、千早はかるたを取った。
卒業式の後、引越準備をしながら最後に千早とかるたを取る新。札を読む太一。「たぶん もう会えん…」と泣き崩れる新に、千早は決意を告げる。「あたしたちには かるたがあるから また 会えるんじゃ ないの?」
その3年後、都立瑞沢高校に入学した千早は、期待に胸を膨らませていた。中学では、仲間が見つからず、やむなく陸上部に入って、かるた100%に取り組む事はできなかった。でも、全校生徒1200人のここでなら、きっと仲間が見つかるに違いない。
相変わらず、単純直情、頭の中はかるた100%のかるたバカの千早は、現役女子高生モデルをしている姉同様に美しく成長したものの、口を開かず動かなければなあとガッカリされる「無駄美人」と異名を取っていた。
勧誘が徒労に終わる中、奇遇にも太一も同じ高校に進学していたことを発見する。歓喜して必死に太一をくどく千早だが、中学ではサッカーをメインにやっていた太一は、かるたはしょせん趣味とつれない。
次の大会で優勝してA級になったら一緒にかるた部を創ってと無理矢理約束させた千早。こっそり試合を覗きに来た太一は、千早を見守りながら、小学生の頃指導してくれていた原田先生に、ぽつぽつと語る。「おれ 中学でも かるた やってたんです」「でも わかって くるんスよ」「青春ぜんぶ懸けたって 新より 強くは なれない」
千早は太一の想像以上に強くなっていた。なにより、絶対に勝つ、という気迫。激闘する千早の情熱にあてられ、言葉を失う太一に先生が諭す。「”青春ぜんぶ 懸けたって 強くなれない”?」「懸けてから 言いなさい」
先生の言葉、そして千早の情熱に、目覚める思いの太一は、自分の情熱の持って行き場を知るのだった。
見事優勝してA級に昇進した千早は、長い事音信不通だった新に、その場で電話を掛ける。
しかし電話に出た、声の低くなった新は、よそよそしく電話を切ってしまう。「かるたとか もう やってないから」
ショックを受けた千早と太一は、新に会って真意を探るため福井へ向かうが…、というような出だし。
千早をはじめ、瑞沢高校かるた部のメンバーもライバル達も、どいつもこいつも、凄い負けず嫌いなのが素晴らしい。とことん勝ちにこだわり、全く手を抜かない、抜け目ない。スポ根マンガも色々あるだろうが、友情、努力、勝利、のどれに焦点が来ているのか、という事であれば、このマンガははっきり勝利である。勝利が全てを引っ張っている。すがすがしい程屈託のないその姿勢は、もちろん諸刃の剣であって、食傷して反発する読者や、人間味の薄さを感じる読者もいるだろう。しかし、私はそのハラを決めた作者の覚悟には喝采を送りたい。
キャラも安定して幅広く、丁寧に描かれている。特に、目の描き分けによる表情などが絶妙だ。
千早や太一、新など、主役級はもちろん素晴らしいが、個人的には、かるた部員の、机くんや、かなちゃんの活躍の方が、結構楽しかったりする。とくにC級昇進を懸けた決勝での戦いは、大変感銘を受けた。
また、物語を通しての千早のライバルになるだろう、現クイーンの若宮詩暢も素晴らしい造形だ。千早とは何か友達になりそうな雰囲気。
他の積み本をさっさと消化して、早急に7巻を入手したいと思う。

末次由紀
ちはやふる
世間での評判は当然知っている。マンガ大賞受賞。最新刊は毎回ランキングトップ。
先行した妻の評価もすこぶる良い。
これでもかっ、という程に期待を込めて読み始めた。
すごい面白い。
取り敢えず、職場でゲットした6巻は一瞬で読み切った。たった今、2周目を読み終わった所である。
読んでいて一番しみじみと伝わってくるのは、作者がどんだけマンガが好きなのか、という事なのである。情熱である。主人公よりも、どんなキャラよりも、作者のこの情熱が、実に気持ちよく届いて、それがこのマンガを読んだ時に感じる、どこか胸のすく感じ、無条件の安心感、何とも言えない暖かな空気、などに繋がっているのだと思う。そんな印象が第一に来る。
マイナーな、競技かるたを題材にした物語である。かるたに魅せられた少女が、少年が、かるたに青春の全てを懸ける、もう100%スポ根マンガで間違いない。
主人公の綾瀬千早は、小学校の同じクラスに転校してきた少年が気にかかっていた。福井なまりで周りから浮いたその少年、綿谷新(あらた)と関わるうち、かるた名人になるという新の夢を打ち明けられる。対戦した新は強かった。新の祖父はかるた永世名人。新も全国学年別の優勝者だったのだ。しかし、千早はそんな新に本気で向かって行き、しかも1枚を取る事ができた。かるたの面白さ、そして情熱もつ事、すなわち本当の意味での「夢」を教えられた千早だった。
千早は、新はかるたなら誰にも負けないといじめっ子連中に啖呵を切る。その言葉通り校内かるた大会で、新は圧倒的な力を見せつける。千早と仲がよいがいじめの中核だった真島太一は決勝で新とまみえる。医者一家に生まれ、敗北を許さない厳格な父母の元、絶対に負けられない太一は、新のメガネを隠してしまう。札が見えない新は暗記力を頼りに善戦するが、やはり後半だんだん苦しくなってくる。見かねた千早が新の代打に立ち、直感的に理解したかるたの戦い方を武器に、太一との激闘を制す。
すっかりかるたの魅力に取り憑かれた千早。千早に引っ張られ、新への牽制で、かるたに付き合う事となった太一。はじめは本気でなかった太一も、競技の中で力を出し、それを認められる事で、かるたの魅力を理解し、そして新への友情が芽生えていった。
しかし、小学6年生は別れの時でもある。太一は遠くの名門中学へ進学が決まり、祖父が倒れた新は福井に戻る事になった。三人チームで出場しようと約束し楽しみにしていた大会も、もう出ないと泣く千早。
かるはた楽しい。でも、仲間がいるから、楽しいのである。一人になるのなら、かるたなんて楽しくない。
新と太一にも事情はある。チームTシャツを造って届けてくれた、二人の気持ち。千早は、二人の後を追い大会に駆け込む。寂しいのは二人も同じなんだ。だから大会は初めてだけど、絶対に勝つ。良い線まで行ったものの、結果として負けてしまったけれど、友情をその場に刻む想いで、千早はかるたを取った。
卒業式の後、引越準備をしながら最後に千早とかるたを取る新。札を読む太一。「たぶん もう会えん…」と泣き崩れる新に、千早は決意を告げる。「あたしたちには かるたがあるから また 会えるんじゃ ないの?」
その3年後、都立瑞沢高校に入学した千早は、期待に胸を膨らませていた。中学では、仲間が見つからず、やむなく陸上部に入って、かるた100%に取り組む事はできなかった。でも、全校生徒1200人のここでなら、きっと仲間が見つかるに違いない。
相変わらず、単純直情、頭の中はかるた100%のかるたバカの千早は、現役女子高生モデルをしている姉同様に美しく成長したものの、口を開かず動かなければなあとガッカリされる「無駄美人」と異名を取っていた。
勧誘が徒労に終わる中、奇遇にも太一も同じ高校に進学していたことを発見する。歓喜して必死に太一をくどく千早だが、中学ではサッカーをメインにやっていた太一は、かるたはしょせん趣味とつれない。
次の大会で優勝してA級になったら一緒にかるた部を創ってと無理矢理約束させた千早。こっそり試合を覗きに来た太一は、千早を見守りながら、小学生の頃指導してくれていた原田先生に、ぽつぽつと語る。「おれ 中学でも かるた やってたんです」「でも わかって くるんスよ」「青春ぜんぶ懸けたって 新より 強くは なれない」
千早は太一の想像以上に強くなっていた。なにより、絶対に勝つ、という気迫。激闘する千早の情熱にあてられ、言葉を失う太一に先生が諭す。「”青春ぜんぶ 懸けたって 強くなれない”?」「懸けてから 言いなさい」
先生の言葉、そして千早の情熱に、目覚める思いの太一は、自分の情熱の持って行き場を知るのだった。
見事優勝してA級に昇進した千早は、長い事音信不通だった新に、その場で電話を掛ける。
しかし電話に出た、声の低くなった新は、よそよそしく電話を切ってしまう。「かるたとか もう やってないから」
ショックを受けた千早と太一は、新に会って真意を探るため福井へ向かうが…、というような出だし。
千早をはじめ、瑞沢高校かるた部のメンバーもライバル達も、どいつもこいつも、凄い負けず嫌いなのが素晴らしい。とことん勝ちにこだわり、全く手を抜かない、抜け目ない。スポ根マンガも色々あるだろうが、友情、努力、勝利、のどれに焦点が来ているのか、という事であれば、このマンガははっきり勝利である。勝利が全てを引っ張っている。すがすがしい程屈託のないその姿勢は、もちろん諸刃の剣であって、食傷して反発する読者や、人間味の薄さを感じる読者もいるだろう。しかし、私はそのハラを決めた作者の覚悟には喝采を送りたい。
キャラも安定して幅広く、丁寧に描かれている。特に、目の描き分けによる表情などが絶妙だ。
千早や太一、新など、主役級はもちろん素晴らしいが、個人的には、かるた部員の、机くんや、かなちゃんの活躍の方が、結構楽しかったりする。とくにC級昇進を懸けた決勝での戦いは、大変感銘を受けた。
また、物語を通しての千早のライバルになるだろう、現クイーンの若宮詩暢も素晴らしい造形だ。千早とは何か友達になりそうな雰囲気。
他の積み本をさっさと消化して、早急に7巻を入手したいと思う。