大阪ハムレット 2巻/森下裕美 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

大阪ハムレット 2巻/森下裕美

という事で、早速2巻も読んだ。

この巻も、いろんな人間模様が描かれる。
読んでいて思ったのは、変わった人達が出てくる普通の話、ではなく、変わった人達が出てくる、変わった話、という印象だ。つまり、ストーリーがあって、キャラを創ったのではなく、キャラクターを創ったらいろいろ動いたので、その中でマンガになりそうな話を描いた、というような印象を受けるという事である。
綺麗に体裁良く、という事をせず、思うところをそのままストンと描いているのが実に好印象。

巻頭の話が良かった。中一の女の子の純情な心と、それ故に住まう闇を描いた話である。読書家で聡明、しかしそれゆえ心を開かず他人を遠ざけ、一人心のシェルターにこもる東直子。教師受けも悪い。だが、岩井先生から短歌・俳句を教えられ、こんな短い文章の中に、こんなに自分の心を表現する方法があるのかと目を開かれる。そして自分を見て、自分に期待してくれている岩井先生。しかし、岩井先生は姉が好きだったのだ。性格が反対で昔からそりの合わないその姉は、不倫で駆け落ちし、これから死ぬとメールしてきた。
直子は願う。「お姉ちゃん 死んで」「死んで最後に 尊敬させて」
ごちゃごちゃと不純で汚い世界からすっと伸びて咲く、美しい桔梗の花を見たい、そう願う少女特有の純な気持ちは本物である。そして家族として姉を想って泣く気持ちも本物だ。明けゆく空に向かって、帰ってこなかった姉に、祝杯を捧げる直子。にじむ涙。その微妙でマーブルな心のかたち。
しかし、何事もなかったかのように姉は帰ってきた。落胆と、安堵。世界は純じゃない。世界は汚い。でも、毎日生きて、毎日一歩もう一歩とそんな世界に分け入っていく自分。
少女ゆえの残酷さ、理想の冷徹さ、世界とのギャップが上手く描かれていると思う。

前後編で描かれるバレエの先生の話も良い。有名バレエ団を卒業し、実家にバレエ教室を開いたハナコ先生。バレエさえあれば何も要らない。ずっと踊っていたい。しかし、たった一人の母はそんな娘を認めずこき下ろす。カッとなったハナコは、母を花瓶で殴って殺そうとしてしまう。母に認められたいという思い。しかしそれは、バレエしかないと思いながら、バレエだけを思い切れないハナコの弱さだった。愛は逃げである。生徒に教えられまたバレエを取り戻すハナコの葛藤と覚悟を描いた話である。

その他、再婚しようとする母を上手く応援できない子供の話。変わらない淋しくない明日を求めながら堕ちてゆく女の話。どんなクズでもゴミでも修理できるリサイクルショップのおじいちゃんと、お母ちゃんに逃げられ、餃子屋も辞めた、クズといわれるお父ちゃんの間で、家族そろった平凡な幸せを求める女の子の話。

どの話もクセが強く、それゆえ素晴らしい味わいがある。各話のキャラがあちこちの話に再登場するのもおなじみだ。全巻からもチラホラ。

3巻にも期待。

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森下裕美
大阪ハムレット 2巻