星になる日/鈴木ジュリエッタ
デビュー作を含む、作者の初期作品集。短編6話収録。
ベースはポップなのだが割と暗めのファンタジー色が強い作品が多い。
オデット 、ドルチェ 、神様 など、その後の作品に引き継がれるモチーフや設定などが散見され、ファンには興味深い内容。
「朝がくる」
重病で意識を失った少年が、同じように意識の戻らない少女の精神世界に入り込んで交流する話。自分を呼んでくれる人がいる、という幸せ。母親の懸命の呼びかけに、少年は目覚めた。そして少年は願う。自分も彼女を呼ぶ事ができる筈だと。きっと朝は来る。
「星になる日」
この話が一番好きかな。
暇を持て余した闇の領主、吸血鬼ドラクロア。100年に一度の珍しい開花も、500年に一度の流星雨も、人狩りも、今日は乗り気せず、空をぶらぶら舞っていると、森の奥で彷徨う女を見かけた。飢饉に喘ぐ里から口減らしのために捨てられた盲目の少女ミナであった。こんな小物でも、いたぶり殺せば暇つぶしにはなるかと、早速手に掛けようとするドラクロアだったが、自らの威容も見えず、死を受け入れているミナは命乞いもせず、詰まらない。「死にたがってる 人間なんか 殺しても つまんねー」「お前に 「生きたい」っていう 欲求を抱かせてやる」。ドラクロアはミナを樹海の主である魔女の館へ連れて行き、魔法で視力を回復させる。しかし、その代償に生命エネルギーを使われたミナは残り2時間ほどの命となってしまう。
なんとかミナに命乞いをさせたいドラクロアは、生への執着を持たせようと、2時間で「スゲーものを 見せてやるよ」と、ミナを引っ張り回す。100年に一度の幻の花の開花に包まれ、500年に一度の流星雨を仰ぐミナ。ただでさえ、初めて世界を見る事ができたミナには、もちろん幻想の風景は素晴らしいものだった。しかし、ミナには別のものも見えていた。自分に向かって差し出されたドラクロアの手。そしてそれを取りに行ける幸せ。こんなに優しくされた事はミナの短い人生にはなかったのだ。
流星雨を見ながら命尽きようとするミナ。最後に、ドラクロアに願う。人は死ぬとお星様になるの。一人で光っているのが淋しくなったら、きっと、星空に私を見つけていてね。暗い森で私を見つけてくれたみたいに。
晴れた夜には約束通り星空を見上げるドラクロア。彼の目に映る煌めきは、ミナが教えてくれた、限りあるゆえに価値のある、命の交歓の思い出なのである。
「マイ ブラッディ ライフ」
一風変わった吸血鬼もの。
吸血鬼の父と、人間の母。そして吸血鬼の京汰。ある日突然現れた父に連れられ、母の元から引き離される。ひとりぼっちになったのは、母か、それとも自分なのか。種族を越えた家族の愛を描いた作品。
「サクラチル」
淡い恋心と心の闇に揺れる少女、桃香。そして学校の桜の木の精、ハル。桃香は、何故か見えるようになったハルに恋の相談に乗ってもらう。例え心に闇が潜んでいても、好きな相手に誠実であろうとする事の美しさ。本当に自分が好きなのは誰なのか?また、桜が咲いたら…。精霊と少女の間の越えられない谷をわたる想いを描く。これもちょっと深い印象。
「拝み屋裏台帳」
除霊をする拝み屋家業の主人公と、成仏できない女子高生のドタバタモノ。オチまで綺麗にまとまっているが、それだけにあっさりした印象。
「椿檻」
「神様」シリーズに繋がる「巴衛」の名が初出。当時の担当から取ったという。雰囲気も少しだけ似ている。
昔々、山の主様が子供を捕らえ、異界の屋敷に幽閉し、笛を吹かせ、愛でていた。カゴの小鳥のように。
巴衛は、流れの違う時の中で、出自を忘れる程の間、一人過ごしていた。ある日山で道に迷った千賀子が
たどり着くまでは。物の怪から千賀子を匿い、話を交わし、巴衛は自らの生を自分で選ぶ事を決める。それは、自分にそれを思い起こさせてくれたこの少女を助けてあげる事でもあった。
こうして眺めてみると面白い。オデット、そしてドルチェ。どうやら鈴木ジュリエッタという作家は、人と、人ならぬモノの恋路に多大な関心があるようである。
また後日書く事になるが、現行連載中の「神様はじめました」は、大変面白い漫画ではあるが、なんかある意味垢抜けてしまって、こうした初期のボテッとしたファンタジー色が抜けた感があり、そこが少々残念なのである。
個人的に、非情に好きなテイストでまとまった短編集である。

鈴木ジュリエッタ
星になる日
ベースはポップなのだが割と暗めのファンタジー色が強い作品が多い。
オデット 、ドルチェ 、神様 など、その後の作品に引き継がれるモチーフや設定などが散見され、ファンには興味深い内容。
「朝がくる」
重病で意識を失った少年が、同じように意識の戻らない少女の精神世界に入り込んで交流する話。自分を呼んでくれる人がいる、という幸せ。母親の懸命の呼びかけに、少年は目覚めた。そして少年は願う。自分も彼女を呼ぶ事ができる筈だと。きっと朝は来る。
「星になる日」
この話が一番好きかな。
暇を持て余した闇の領主、吸血鬼ドラクロア。100年に一度の珍しい開花も、500年に一度の流星雨も、人狩りも、今日は乗り気せず、空をぶらぶら舞っていると、森の奥で彷徨う女を見かけた。飢饉に喘ぐ里から口減らしのために捨てられた盲目の少女ミナであった。こんな小物でも、いたぶり殺せば暇つぶしにはなるかと、早速手に掛けようとするドラクロアだったが、自らの威容も見えず、死を受け入れているミナは命乞いもせず、詰まらない。「死にたがってる 人間なんか 殺しても つまんねー」「お前に 「生きたい」っていう 欲求を抱かせてやる」。ドラクロアはミナを樹海の主である魔女の館へ連れて行き、魔法で視力を回復させる。しかし、その代償に生命エネルギーを使われたミナは残り2時間ほどの命となってしまう。
なんとかミナに命乞いをさせたいドラクロアは、生への執着を持たせようと、2時間で「スゲーものを 見せてやるよ」と、ミナを引っ張り回す。100年に一度の幻の花の開花に包まれ、500年に一度の流星雨を仰ぐミナ。ただでさえ、初めて世界を見る事ができたミナには、もちろん幻想の風景は素晴らしいものだった。しかし、ミナには別のものも見えていた。自分に向かって差し出されたドラクロアの手。そしてそれを取りに行ける幸せ。こんなに優しくされた事はミナの短い人生にはなかったのだ。
流星雨を見ながら命尽きようとするミナ。最後に、ドラクロアに願う。人は死ぬとお星様になるの。一人で光っているのが淋しくなったら、きっと、星空に私を見つけていてね。暗い森で私を見つけてくれたみたいに。
晴れた夜には約束通り星空を見上げるドラクロア。彼の目に映る煌めきは、ミナが教えてくれた、限りあるゆえに価値のある、命の交歓の思い出なのである。
「マイ ブラッディ ライフ」
一風変わった吸血鬼もの。
吸血鬼の父と、人間の母。そして吸血鬼の京汰。ある日突然現れた父に連れられ、母の元から引き離される。ひとりぼっちになったのは、母か、それとも自分なのか。種族を越えた家族の愛を描いた作品。
「サクラチル」
淡い恋心と心の闇に揺れる少女、桃香。そして学校の桜の木の精、ハル。桃香は、何故か見えるようになったハルに恋の相談に乗ってもらう。例え心に闇が潜んでいても、好きな相手に誠実であろうとする事の美しさ。本当に自分が好きなのは誰なのか?また、桜が咲いたら…。精霊と少女の間の越えられない谷をわたる想いを描く。これもちょっと深い印象。
「拝み屋裏台帳」
除霊をする拝み屋家業の主人公と、成仏できない女子高生のドタバタモノ。オチまで綺麗にまとまっているが、それだけにあっさりした印象。
「椿檻」
「神様」シリーズに繋がる「巴衛」の名が初出。当時の担当から取ったという。雰囲気も少しだけ似ている。
昔々、山の主様が子供を捕らえ、異界の屋敷に幽閉し、笛を吹かせ、愛でていた。カゴの小鳥のように。
巴衛は、流れの違う時の中で、出自を忘れる程の間、一人過ごしていた。ある日山で道に迷った千賀子が
たどり着くまでは。物の怪から千賀子を匿い、話を交わし、巴衛は自らの生を自分で選ぶ事を決める。それは、自分にそれを思い起こさせてくれたこの少女を助けてあげる事でもあった。
こうして眺めてみると面白い。オデット、そしてドルチェ。どうやら鈴木ジュリエッタという作家は、人と、人ならぬモノの恋路に多大な関心があるようである。
また後日書く事になるが、現行連載中の「神様はじめました」は、大変面白い漫画ではあるが、なんかある意味垢抜けてしまって、こうした初期のボテッとしたファンタジー色が抜けた感があり、そこが少々残念なのである。
個人的に、非情に好きなテイストでまとまった短編集である。