神様はじめました/鈴木ジュリエッタ | 読んだり観たり聴いたりしたもの

神様はじめました/鈴木ジュリエッタ

と言う事で、一連のジュリエッタエントリを見れば明らかなように、すっかりジュリエッタファンになってしまったので、もちろんの事、次の作品に手を出した。
現在も連載中の最新作である。ラッキーな事に丁度のタイミングで職場で4巻セットを拾ったので、早速読んだ。その後8巻まで買い増し。

ドルチェ、オデットに負けず劣らずの素晴らしい作品で、最も素晴らしい点は、この面白い漫画がなんと13巻まであってなお連載中という点だろう。

一人の漫画家の作品の系譜としてみた場合に、転換点を感じるほど凄くあか抜けた印象。長いストーリーをまとめることが苦手と思われる作者だったが、今作では、はっきりと、密集した連載によるストーリー漫画を意識した構成になっている。
そして驚くべきなのは、そのページあたりのエンターテインメント密度の高さだろう。作者の渾身の気合いがひしひしと感じられる。

ただし、巻が進むにつれ、若干、そうしたパワーが薄れ、「ただのストーリー漫画」に堕ちていっているような気配があり、危惧するところもある。垢抜けたと同時にジュリエッタ独特の色も抜けてしまっている印象。

主人公は薄幸の女子高生、桃園奈々生。ギャンブル狂の父親と借金苦に喘ぐ二人暮らしを健気に支えていたが、とうとうある日父親が蒸発。借金取りに追われ、住む場所も失い、呆然と公園に佇む奈々生に声を掛けてきたのは、怪しい風体のミカゲと名乗る中年男性だった。奈々生の境遇に涙したミカゲはさり気なくおでこにキスして励ますと、私の家を譲りましょうと地図を渡して去っていった。半信半疑ながら地図の場所にたどり着いてみると果たして荒廃した社がポツリ。騙されたと思った矢先、境内に灯った鬼火と、怒りの形相で出迎えた狐の妖怪。20年間も留守番をさせやがってと憤懣やるかたない美しい人型の狐は、巴衛と名乗るミカゲ社の神使であった。ミカゲ社の主の座を譲られたということは、奈々生は土地神の座を引き受けたと言うことになる訳である。久々の主人の着座に泣いて喜ぶ鬼火童子の虎鉄と鬼切。一方巴衛は人間風情に土地神が勤まる訳がないと奈々生の存在を認めず社を出てしまう。土地神が勤まらないのはもちろんと思うが、20年もミカゲを待ち続けた巴衛の心を想い、せめて一泊の礼と別れを告げに異世界へ巴衛を捜しに行く奈々生は、魑魅魍魎に狙われる。力の使い方も知らぬ未熟な人間の土地神など、妖にとってはカモネギどころか舟盛りが歩いているようなものだった。九死に一生と逃げまどう奈々生を巴衛は高みの見物。泣いて謝れば助けてやるという巴衛を意地を張ってはねつける奈々生は、ついにこれまでかという場面で伝家の宝刀を抜く。それは口づけを交わし、神使を絶対服従させる契約だった。
こうしてひょんなことからボロ神社に住まい、美しい野狐の妖怪を神使と従えた、ヘンテコ神様生活が始まってしまった。そして、生き神としての修行に励む中で、奈々生は巴衛に惹かれてゆく。自分の恋を自覚した奈々生は巴衛に告白するが、巴衛はあっさりスルー。しかし一緒に過ごす日々の中で二人の絆は確実に深まってゆき…。という様な感じである。

基本、ドタバタ恋愛コメディで、まあ主従ものと言えないこともない。それより、人と人でないものの恋、という作者の基本テーマ(実際あらゆる漫画がこれだ)がキーだろう。人でないものを描くことは、取りも直さず、人を描くことになるからだ。今後、こうしたポイントをどれだけ活かした作品になって行くかが評価の分かれ目になってくるだろう。しかしジュリエッタはほんとに好きだなこのパターン。

8巻まで読んだ限りでは、長編ストーリーの組み方は大変上達している。が、それでも並下というレベルだ。ただ、努力の跡はひしひしと感じるのでファンとしては応援したいところ。

海外のWikipediaで面白いものを見つけた。熱心なファンは日本の漫画のページを作っているが、当然(なのか?)、「神様はじめました」や作者の鈴木ジュリエッタのページもある。ちなみに海外タイトルは「Kamisama Kiss」である。理由は明らかだろう。で、コアなマニアは原題も要チェックなのだろう、日本語タイトルも併記してある。そしてご丁寧に、その英訳も載せているのだが、それが「Nice to Meet You, Kamisama」となっていて思わず吹いた。神様はじめまして。惜しい。その内直しておいてやろう。

さて、この作品、最近本屋でやたら目に付くだろう。なんとアニメ化とあいなったためだ。テレビ東京系で10/1深夜より放送である。もちろん、関西でも5日から放送されるので録画してチェックする予定。


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