カラクリオデット 6巻/鈴木ジュリエッタ
と言う訳でいよいよ最終巻。
最終巻を読む前、この素晴らしい漫画の行く末に、色々と思いを巡らせていた。
例えば、オデットと言えば、白鳥の湖である。
白鳥の湖と言えば、魔法で白鳥にさせられた姫と、その秘密を知り姫を愛した王子が、結局悪魔に負けて姫を人間に戻す事ができず、悲観して心中する悲劇である。ふむふむ、なるほどなー、オデットはアンドロイドだしなー。と言うような安易な予想は、誰しも考える所だろう。となると、おじゃまキャラの黒鳥オディールはグレース?ならトラヴィスが王子なのか?いやいや王子はやっぱり朝生でしょ。しかしもしかすると柚木村が…。という事はハッピーエンド版?つーことは人間になるのか?いやアンドロイドのまま幸せを掴んだ方が物語としては味があるだろう…。
などと、妄想は膨らむばかり。
さて、どうなることやら…。
今巻の見所は、まず、グレースとオデットが親交を深める話。オデットを諦められないオーウェン博士は、強硬手段に出る。オデットの頭部だけでも拉致するよう博士に命じられ高校に侵入したグレース。オデットと出会い隙をうかがうが、すっかりオデットのペースに巻き込まれ、愛する人がいる喜びを語り人を想う気持ちをグレースと分かち合ったオデットを、攻撃する事はできなかった。
人間の高校で人間として暮らしていると、オデットは自分がロボットである事を忘れてしまう。そもそも、ロボットである事、は本質的な問題なのだろうか。
洋子の叔母の結婚話に触発され、以前から花嫁のヒラヒラが大好きだったオデットは、自身の「結婚」について考える。運命の人は誰だろうと、オデットは朝生に問わず語り。「オデット どんな奴と 結婚するのかな」「朝生だったら 面白いな」。オデットの無邪気な笑顔は、読者の胸を締め上げる。そして、やりたきゃロボット同士でやれ、と3月で晴れて卒業の朝生は、オデットのお守りも終わりでせいせいすると突き放す。
諦めの悪いオーウェンは、宿泊先のホテルでたまたまウェイターのバイトをしていた朝生を見つける。クリスからの映像で、オデットと遊んでいた事を知っていたのだ。オーウェンは、朝生に対ロボットショックガンを渡し、オデットの拉致を500万円で依頼するが、朝生は微塵も躊躇せず拒否。
「気が引けると いうのですか? オデットは ただのロボット ですよ」
「ただの ロボットじゃ ない」朝生は席を立つ。
「俺にとって アイツは どうしようも なく 迷惑な女だ」
朝生はオデットがロボットである事を忘れる事はないだろうが、しかし、オデットとの関係において、重要なファクターはもっと別の所にある、という事を示す。
念のため吉沢博士に忠告しようと電話を掛ける朝生は、吹き抜けで階下のロビーを暢気に歩くオデットを見かけて驚く。オデットは、トラヴィスにホテルのチャペルへ呼び出されていた。トラヴィスはここでオデットを花嫁に迎えるつもりだった。「俺だけが お前と同じ 生き物だ オデット」「クリスや グレース まして 人間に 何がわかる?」「お前を受け入れ られるのは 俺だけ」「そして俺には お前だけ」
しかし、オデットは、融合して一つになろうというトラヴィスの「求婚」を断る。
「オデットは トラヴィスだけ 選べないよ」「みんなのこと 大好きだもの」
例え、嫌と言うほど孤独を味わって、メソメソ凹む事がこの先何度あったとしても、自分の思いこみかも知れないとしても、「一人ではない」という自分の気持ちを大切にしたいオデットだった。
キレたトラヴィスは、お前なんかもう知らない、とオデットに畳み掛ける。
「ロボットの くせに… 人間の真似して 人間のふりして」「頑張ったって お前は所詮 人間には なれないのに」
しかし、そこへ朝生が飛び込んでくる。吉沢博士にオデットを助けてくれと頼まれ、オデットにはたまたま通りかかったから、と答える朝生だが、危険を冒してオデットを助けに来たその気持ちは明らかだ。しかし、オデットには不可解だった。ロボットだから相手していられないと、突き放した朝生が何故?
対ロボットショックガンで攻撃され、逆に制御機能が暴走したグレースは侵入者を排除すべく、攻撃を開始した。グレースの腕に仕込まれた火器が火を噴き、オデットの顔面に銃弾が命中。辛うじて持ちこたえたオデットに二の矢が容赦なく放たれる。しかし、トラヴィスが身を挺し、オデットの代わりにその破壊力を引き受ける。左半身を吹き飛ばされ横たわるトラヴィス。お前なんかもう知らないと言っていたトラヴィスが何故?
「どうして?」すがるオデットに朝生は諭す。「お前は言葉を 鵜呑みにしすぎだ」「大事なのは 言葉より 行動だろ?」
朝生は、いつでもオデットを安心させてくれる答えをくれるのだ。
顔面が半壊したオデットは、朝生に顔を見られてしまった事を嘆く。一方ボディが半壊し機能停止したトラヴィスを前に、オーウェンはトラヴィスを材料に新作の製作を決断する。パパの最高傑作である事を誇りにしていたトラヴィスを想い、グレースはトラヴィスを連れて家出。すがる思いで吉沢博士を訪ねる。事の次第を聞いた吉沢博士は、オーウェンに眠る親の愛を試そうと、オーウェンに白紙の小切手を突きつけ、トラヴィスの設計図を売れと、以前オーウェンにやられた事の意趣返しを演じる。
「あなたは ロボットに 心があるとでも 言うんですか?」「思ってなければ 俺は ここに 来てないよ」
オーウェンが破り捨てた小切手を見て、驚き、オーウェンの元へ駆け戻るグレース。破ってくれて本当に良かったと、別の意味でも安堵で腰が抜ける吉沢博士であった。本当に吉沢博士は良い奴だ。大ファンである。
ようやく顔が治ったオデットは学校に戻るが、朝生がもうすぐ卒業していなくなる、という現実を受け止められずにいた。そんなオデットの気も知らず、へらへらと卒業を楽しみに語る朝生に、卒業しないでくれと無茶を言い詰め寄るオデット。しかし、時は流れるのだ。心が読めてしまう特異体質で対人恐怖症だった白雪は、学校生活での人格形成によりそれらを克服しつつあった。着々と岡田との仲を深めてゆく洋子。卒業する朝生。「なのにオデットは まだ前に進めない」。「千年経っても 変わらずオデットの 側にいるから」というクリスの優しい気持ちや、強い子だと言ってくれる洋子に励まされたオデットは、初めの一歩を踏み出す事を決意する。
こうして、この物語は終わる。
最後に柚木村も登場できたのが良かった。意を決してオデットに指輪を渡し、「彼氏が できるまで 大切に持ってるね」と言われて凹んでいたのが最高(4巻参照)。
こうして振り返ると、結局、その名の由来となった原作の、人間の世界へ戻りたいが戻れないというモチーフを、描いているようでいないようで、微妙な感じだろうか。まあ拘る必要もないので、これはこれで良いと思う。作者もあとがきで書いていたが、もともと柚木村とくっつけるつもり満々だったが、柚木村が人気無くてやめた、という事らしい。それはそれで見てみたかったな。
とても素晴らしい、大好きな漫画だが、後半、特に最終話とか、かなり作画が酷いところがある。時間的にいろいろとキビシイものがあったのだろうか。
鈴木ジュリエッタという作家は、1話1話のお話の作りは非常に上手いものの、俯瞰的に長期のストーリーを構成管理することは、あまり得意でないかもしくは重要視していないという印象。
だから、「お話」を期待する読者には、エピソードばっかりで流れがないなあ、という感じだろう。
マンガを二種類に分けて、ストーリーを語るためにキャラクターを描くものと、キャラクターを描くためにお話を作るものがあるとするなら、本作を含め著者のマンガは明らかに後者のタイプであろう。
本作の魅力は、オデットを始めキャラクターの造形に尽きる。そのキラキラとした魅力が満ちたページの数々は何度見ても見飽きない。
特に素晴らしいのは、その表情だ。とりわけ意志に溢れた目の表情がよい。そしてそれを引き立てるのが、多彩な構図とポーズだ。あまり特殊なものでは作画が乱れているのもご愛敬だろう。
上記でも取り上げた、オデットが朝生に結婚について語るシーン。「朝生だったら 面白いな」とオデットは何の構えもない笑顔で話す。こうしたオデットの心理の描き方。照れるでもなく探るでもない。「朝生だったら 幸せ」でも「「朝生だったら 嬉しい」でもない。この「面白いな」の一言に、それまでのオデットの造形のエッセンスが込められている。
展開の振り幅もかなり個性的で素晴らしい。どんなに技術があり上手く描いたとしても、個性が無い作品などに価値はない。
また、結構ギャグも面白く、テイストが非常に好みである。コマ裏でのちょこまかとした展開もとても楽しい。
キャラも設定もいろいろ登場し、描こうと思えばいくらでも描く内容はあると思うが、残念ながら終了である。
それでも、マイベスト漫画の上位にあり続けることは間違いないだろう。
ただ、世間的にはそれほど評価されてない事からも分かるように、作者のセンスが個人的に非常に合う、というポイントが大きいのだろうとは思う。
メッセージボードでも書いたが、作者の連載中の最新作である「神様はじめました 」を4冊、早速職場で拾ってきた。こちらも楽しみである。

鈴木ジュリエッタ
カラクリオデット 6巻
最終巻を読む前、この素晴らしい漫画の行く末に、色々と思いを巡らせていた。
例えば、オデットと言えば、白鳥の湖である。
白鳥の湖と言えば、魔法で白鳥にさせられた姫と、その秘密を知り姫を愛した王子が、結局悪魔に負けて姫を人間に戻す事ができず、悲観して心中する悲劇である。ふむふむ、なるほどなー、オデットはアンドロイドだしなー。と言うような安易な予想は、誰しも考える所だろう。となると、おじゃまキャラの黒鳥オディールはグレース?ならトラヴィスが王子なのか?いやいや王子はやっぱり朝生でしょ。しかしもしかすると柚木村が…。という事はハッピーエンド版?つーことは人間になるのか?いやアンドロイドのまま幸せを掴んだ方が物語としては味があるだろう…。
などと、妄想は膨らむばかり。
さて、どうなることやら…。
今巻の見所は、まず、グレースとオデットが親交を深める話。オデットを諦められないオーウェン博士は、強硬手段に出る。オデットの頭部だけでも拉致するよう博士に命じられ高校に侵入したグレース。オデットと出会い隙をうかがうが、すっかりオデットのペースに巻き込まれ、愛する人がいる喜びを語り人を想う気持ちをグレースと分かち合ったオデットを、攻撃する事はできなかった。
人間の高校で人間として暮らしていると、オデットは自分がロボットである事を忘れてしまう。そもそも、ロボットである事、は本質的な問題なのだろうか。
洋子の叔母の結婚話に触発され、以前から花嫁のヒラヒラが大好きだったオデットは、自身の「結婚」について考える。運命の人は誰だろうと、オデットは朝生に問わず語り。「オデット どんな奴と 結婚するのかな」「朝生だったら 面白いな」。オデットの無邪気な笑顔は、読者の胸を締め上げる。そして、やりたきゃロボット同士でやれ、と3月で晴れて卒業の朝生は、オデットのお守りも終わりでせいせいすると突き放す。
諦めの悪いオーウェンは、宿泊先のホテルでたまたまウェイターのバイトをしていた朝生を見つける。クリスからの映像で、オデットと遊んでいた事を知っていたのだ。オーウェンは、朝生に対ロボットショックガンを渡し、オデットの拉致を500万円で依頼するが、朝生は微塵も躊躇せず拒否。
「気が引けると いうのですか? オデットは ただのロボット ですよ」
「ただの ロボットじゃ ない」朝生は席を立つ。
「俺にとって アイツは どうしようも なく 迷惑な女だ」
朝生はオデットがロボットである事を忘れる事はないだろうが、しかし、オデットとの関係において、重要なファクターはもっと別の所にある、という事を示す。
念のため吉沢博士に忠告しようと電話を掛ける朝生は、吹き抜けで階下のロビーを暢気に歩くオデットを見かけて驚く。オデットは、トラヴィスにホテルのチャペルへ呼び出されていた。トラヴィスはここでオデットを花嫁に迎えるつもりだった。「俺だけが お前と同じ 生き物だ オデット」「クリスや グレース まして 人間に 何がわかる?」「お前を受け入れ られるのは 俺だけ」「そして俺には お前だけ」
しかし、オデットは、融合して一つになろうというトラヴィスの「求婚」を断る。
「オデットは トラヴィスだけ 選べないよ」「みんなのこと 大好きだもの」
例え、嫌と言うほど孤独を味わって、メソメソ凹む事がこの先何度あったとしても、自分の思いこみかも知れないとしても、「一人ではない」という自分の気持ちを大切にしたいオデットだった。
キレたトラヴィスは、お前なんかもう知らない、とオデットに畳み掛ける。
「ロボットの くせに… 人間の真似して 人間のふりして」「頑張ったって お前は所詮 人間には なれないのに」
しかし、そこへ朝生が飛び込んでくる。吉沢博士にオデットを助けてくれと頼まれ、オデットにはたまたま通りかかったから、と答える朝生だが、危険を冒してオデットを助けに来たその気持ちは明らかだ。しかし、オデットには不可解だった。ロボットだから相手していられないと、突き放した朝生が何故?
対ロボットショックガンで攻撃され、逆に制御機能が暴走したグレースは侵入者を排除すべく、攻撃を開始した。グレースの腕に仕込まれた火器が火を噴き、オデットの顔面に銃弾が命中。辛うじて持ちこたえたオデットに二の矢が容赦なく放たれる。しかし、トラヴィスが身を挺し、オデットの代わりにその破壊力を引き受ける。左半身を吹き飛ばされ横たわるトラヴィス。お前なんかもう知らないと言っていたトラヴィスが何故?
「どうして?」すがるオデットに朝生は諭す。「お前は言葉を 鵜呑みにしすぎだ」「大事なのは 言葉より 行動だろ?」
朝生は、いつでもオデットを安心させてくれる答えをくれるのだ。
顔面が半壊したオデットは、朝生に顔を見られてしまった事を嘆く。一方ボディが半壊し機能停止したトラヴィスを前に、オーウェンはトラヴィスを材料に新作の製作を決断する。パパの最高傑作である事を誇りにしていたトラヴィスを想い、グレースはトラヴィスを連れて家出。すがる思いで吉沢博士を訪ねる。事の次第を聞いた吉沢博士は、オーウェンに眠る親の愛を試そうと、オーウェンに白紙の小切手を突きつけ、トラヴィスの設計図を売れと、以前オーウェンにやられた事の意趣返しを演じる。
「あなたは ロボットに 心があるとでも 言うんですか?」「思ってなければ 俺は ここに 来てないよ」
オーウェンが破り捨てた小切手を見て、驚き、オーウェンの元へ駆け戻るグレース。破ってくれて本当に良かったと、別の意味でも安堵で腰が抜ける吉沢博士であった。本当に吉沢博士は良い奴だ。大ファンである。
ようやく顔が治ったオデットは学校に戻るが、朝生がもうすぐ卒業していなくなる、という現実を受け止められずにいた。そんなオデットの気も知らず、へらへらと卒業を楽しみに語る朝生に、卒業しないでくれと無茶を言い詰め寄るオデット。しかし、時は流れるのだ。心が読めてしまう特異体質で対人恐怖症だった白雪は、学校生活での人格形成によりそれらを克服しつつあった。着々と岡田との仲を深めてゆく洋子。卒業する朝生。「なのにオデットは まだ前に進めない」。「千年経っても 変わらずオデットの 側にいるから」というクリスの優しい気持ちや、強い子だと言ってくれる洋子に励まされたオデットは、初めの一歩を踏み出す事を決意する。
こうして、この物語は終わる。
最後に柚木村も登場できたのが良かった。意を決してオデットに指輪を渡し、「彼氏が できるまで 大切に持ってるね」と言われて凹んでいたのが最高(4巻参照)。
こうして振り返ると、結局、その名の由来となった原作の、人間の世界へ戻りたいが戻れないというモチーフを、描いているようでいないようで、微妙な感じだろうか。まあ拘る必要もないので、これはこれで良いと思う。作者もあとがきで書いていたが、もともと柚木村とくっつけるつもり満々だったが、柚木村が人気無くてやめた、という事らしい。それはそれで見てみたかったな。
とても素晴らしい、大好きな漫画だが、後半、特に最終話とか、かなり作画が酷いところがある。時間的にいろいろとキビシイものがあったのだろうか。
鈴木ジュリエッタという作家は、1話1話のお話の作りは非常に上手いものの、俯瞰的に長期のストーリーを構成管理することは、あまり得意でないかもしくは重要視していないという印象。
だから、「お話」を期待する読者には、エピソードばっかりで流れがないなあ、という感じだろう。
マンガを二種類に分けて、ストーリーを語るためにキャラクターを描くものと、キャラクターを描くためにお話を作るものがあるとするなら、本作を含め著者のマンガは明らかに後者のタイプであろう。
本作の魅力は、オデットを始めキャラクターの造形に尽きる。そのキラキラとした魅力が満ちたページの数々は何度見ても見飽きない。
特に素晴らしいのは、その表情だ。とりわけ意志に溢れた目の表情がよい。そしてそれを引き立てるのが、多彩な構図とポーズだ。あまり特殊なものでは作画が乱れているのもご愛敬だろう。
上記でも取り上げた、オデットが朝生に結婚について語るシーン。「朝生だったら 面白いな」とオデットは何の構えもない笑顔で話す。こうしたオデットの心理の描き方。照れるでもなく探るでもない。「朝生だったら 幸せ」でも「「朝生だったら 嬉しい」でもない。この「面白いな」の一言に、それまでのオデットの造形のエッセンスが込められている。
展開の振り幅もかなり個性的で素晴らしい。どんなに技術があり上手く描いたとしても、個性が無い作品などに価値はない。
また、結構ギャグも面白く、テイストが非常に好みである。コマ裏でのちょこまかとした展開もとても楽しい。
キャラも設定もいろいろ登場し、描こうと思えばいくらでも描く内容はあると思うが、残念ながら終了である。
それでも、マイベスト漫画の上位にあり続けることは間違いないだろう。
ただ、世間的にはそれほど評価されてない事からも分かるように、作者のセンスが個人的に非常に合う、というポイントが大きいのだろうとは思う。
メッセージボードでも書いたが、作者の連載中の最新作である「神様はじめました 」を4冊、早速職場で拾ってきた。こちらも楽しみである。