巴がゆく!/田村由美 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

巴がゆく!/田村由美

少し前になるが、文庫全5巻を読み終わった。

巨悪に立ち向かうアクションドラマとして十分に楽しめるものだった。

人間にとって、戦いというものは何なのだろうか。
生命にとって生存競争がその本質であるならば、人は、戦いの行為そのものに命の目的を見いだす事もできる。
戦いの中でしか生きられない、生命を燃やし尽くす事のできない人がいる。
そして、戦いの中でしか生まれ得ない恋、共に戦う事で寄り添える愛もあるのだろう。

こうした、戦いと愛に翻弄される男女の物語が激しく、そして丹念に綴られる。

心から敬愛する伊織の前に立ちふさがる宿敵、上総。かつての上官であり、そして恋人でもあった上総。そんな上総の元へ、巴はゆく。殺したいほど憎んでいる敵の元へ。最愛の伊織を振り捨ててまで。
安易に結果を欲するものであれば、その選択はない。
もちろん結果は欲しい。しかし、結果に至るまでの魂の苦闘、肉体の激闘、それこそが命の糧であり、生の目的そのものであるから、巴は走るのだ。

この漫画を読む事でたぎってくる血の感覚は、こうした本能的なものであり、人間が何故自らの陰惨な血の歴史などにロマンを感じるかという事の答えの一部でもあるだろう。

端的な殺し合いだけではない。ある意味人生は戦いの連続である。この漫画がそうした市井の人々の日常にエネルギーをもたらすものであるのは間違いないだろう。


田村由美
巴がゆく!