観用少女 プランツ・ドール 1/川原由美子
妻のお薦めと言うことで読んでみた。
作者は知らないなと思っていたら、前略ミルクハウスの人だった。そう言われるとちょっとタッチが面影あるかも。
タイトルからエロ系を想像する人もいるかも知れないが、そういう要素は完全にゼロ。
遠未来もしくは近未来、または地球ではなく、地球とよく似た別の星の話かも知れない。
はっと息を呑むほどに可憐で美しい少女の姿をしてはいるが、人ではなく、生きる人形、と言われている観用少女、プランツ・ドール、略してプランツと呼ばれる存在を含有する世界を描いた話である。
プランツを所有することは裕福層のステイタスとなっている。
日に三杯の温めたミルクと砂糖菓子で維持できるが、プランツをより輝かせるためには所有者の愛情を惜しみなく注ぐ必要があった。愛情こそがプランツの糧であり、それを失ったプランツは枯れていく、と言われている。
プランツは、その心を溶かすような天使の笑みを、誰にでも向ける訳ではない。相性があるのだ。プランツに気に入られた人でなければ、それを所有することは難しいのであった。
プランツは喋らない。あまり意志も示さず動きも少ない。ただ、着飾られて座り、愛情を求め、素晴らしい微笑みをたたえるだけだ。しかしその微笑みが全てを変えてしまうのだ。その微笑みのために、人々は目の玉の飛び出るような高額のローンを組み、競ってプランツを手に入れようとするのだった。
こうした、プランツとそれを求める人々の色々なお話が詰まった、11話の掌編からなるシリーズ第1巻である。基本的にそれぞれ独立したストーリーであるので、どこから読んでもどれを読んでも構わない。
ほろっとする人情話からサスペンス、ホラーまで、いろんなモチーフが揃っている。
どの話も好きだが、「スノウホワイト」「レイニイ・ムーン」「ブルードール」「空中庭園」などが特に印象深かった。
プランツの詳細な正体については語られない。人間の少女そのものの姿をしているが、人ではないとされている。枯れるという表現から植物のようでもあるので、遺伝子工学を応用した生命体かも知れないし、メンテナンスという表現も出てくることからロボットもしくはサイボーグといった路線も考えられるが、一切謎である。従ってSFとも取れるし、ファンタジーとして読んでも良いだろう。
いずれにせよ、人々はプランツを、植物や愛玩動物、もしくは美術品のように愛で、求め、そしてその存在に癒されているのだ。
多分、現在でいうと超高級自動車程度の価格と思われるプランツを、そうした莫大な代償を払ってでも手に入れたいと人々に思わせるほどの魅力を備えた存在として漫画上で表現する、という事は大変な技量を要すると思われる。
つまり、プランツのその一瞬の微笑みで読者の心までも掴めなければ、この漫画は死んでしまうからだ。
その観点からは、淡い繊細な細線を重ねた美しい描画で、プランツの魅惑の笑みと表情を表現し得ていると思われる。そして表情だけでなく、コマ割りやページ構成、ストーリー上の役回りなど、プランツのその愛玩せずにはいられない存在としての表現は実に見事であると言える。
プランツはなにもしない。ただ、そこにいて微笑むだけである。そしてそれこそが、プランツを愛する者達の無上の喜びなのである。
愛とは与えるものである、とは言われるが、人が持つ無償の愛の行為を、その行為の生まれいずる源流を、より根元的にくっきりと切り取り提示するための仕掛けが、このプランツ・ドールではないだろうか。
2巻も楽しみである。
川原由美子
観用少女 プランツ・ドール 1
作者は知らないなと思っていたら、前略ミルクハウスの人だった。そう言われるとちょっとタッチが面影あるかも。
タイトルからエロ系を想像する人もいるかも知れないが、そういう要素は完全にゼロ。
遠未来もしくは近未来、または地球ではなく、地球とよく似た別の星の話かも知れない。
はっと息を呑むほどに可憐で美しい少女の姿をしてはいるが、人ではなく、生きる人形、と言われている観用少女、プランツ・ドール、略してプランツと呼ばれる存在を含有する世界を描いた話である。
プランツを所有することは裕福層のステイタスとなっている。
日に三杯の温めたミルクと砂糖菓子で維持できるが、プランツをより輝かせるためには所有者の愛情を惜しみなく注ぐ必要があった。愛情こそがプランツの糧であり、それを失ったプランツは枯れていく、と言われている。
プランツは、その心を溶かすような天使の笑みを、誰にでも向ける訳ではない。相性があるのだ。プランツに気に入られた人でなければ、それを所有することは難しいのであった。
プランツは喋らない。あまり意志も示さず動きも少ない。ただ、着飾られて座り、愛情を求め、素晴らしい微笑みをたたえるだけだ。しかしその微笑みが全てを変えてしまうのだ。その微笑みのために、人々は目の玉の飛び出るような高額のローンを組み、競ってプランツを手に入れようとするのだった。
こうした、プランツとそれを求める人々の色々なお話が詰まった、11話の掌編からなるシリーズ第1巻である。基本的にそれぞれ独立したストーリーであるので、どこから読んでもどれを読んでも構わない。
ほろっとする人情話からサスペンス、ホラーまで、いろんなモチーフが揃っている。
どの話も好きだが、「スノウホワイト」「レイニイ・ムーン」「ブルードール」「空中庭園」などが特に印象深かった。
プランツの詳細な正体については語られない。人間の少女そのものの姿をしているが、人ではないとされている。枯れるという表現から植物のようでもあるので、遺伝子工学を応用した生命体かも知れないし、メンテナンスという表現も出てくることからロボットもしくはサイボーグといった路線も考えられるが、一切謎である。従ってSFとも取れるし、ファンタジーとして読んでも良いだろう。
いずれにせよ、人々はプランツを、植物や愛玩動物、もしくは美術品のように愛で、求め、そしてその存在に癒されているのだ。
多分、現在でいうと超高級自動車程度の価格と思われるプランツを、そうした莫大な代償を払ってでも手に入れたいと人々に思わせるほどの魅力を備えた存在として漫画上で表現する、という事は大変な技量を要すると思われる。
つまり、プランツのその一瞬の微笑みで読者の心までも掴めなければ、この漫画は死んでしまうからだ。
その観点からは、淡い繊細な細線を重ねた美しい描画で、プランツの魅惑の笑みと表情を表現し得ていると思われる。そして表情だけでなく、コマ割りやページ構成、ストーリー上の役回りなど、プランツのその愛玩せずにはいられない存在としての表現は実に見事であると言える。
プランツはなにもしない。ただ、そこにいて微笑むだけである。そしてそれこそが、プランツを愛する者達の無上の喜びなのである。
愛とは与えるものである、とは言われるが、人が持つ無償の愛の行為を、その行為の生まれいずる源流を、より根元的にくっきりと切り取り提示するための仕掛けが、このプランツ・ドールではないだろうか。
2巻も楽しみである。