一億三千万人のための小説教室/高橋源一郎 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

一億三千万人のための小説教室/高橋源一郎

NHKの「ようこそ先輩」という番組に出演した際のレジメをもとに、小説を書く、という事について易しい言葉で説いてゆくレッスン形式の本。

ただし、一刻も早く小説新人賞を取りたいから手っ取り早くテクを教えてくれ、というような人には、全く無用の本。
普段あまり本も読まず、小説を書くなど思ったこともない人に向けて、小説を書くとは、と、押し売りならぬ、押しレッスンをするという、いったい誰の役に立つのかなと思うような不思議な本である。
ひどい言葉で義務教育を批判し、全ての人が小説について考えることこそ深く素晴らしい事であるかのように語っているが、少々視野狭窄と自己陶酔が過ぎるというものだ。

この本の内容を一言でまとめると、
・小説とはつかまえるものだ
・自分のことを書け
・書き方は、先人の真似をしろ
で片が付く。
結局大の小説好きである著者の小説論を展開しているだけで、プラグマティックな小説作法などは全くない。
ただしそれは、そもそも前書きで、小説教室の類に禄なものは無いと、この本の無益さについてはあらかじめ言及されているので仕方がない。

付録の、この作家・小説を真似しろというリストは良かった。メモしておく。

太宰治、夏目漱石「ケーベル先生」、石川啄木「ローマ字日記」、芥川龍之介、葛西善蔵「子を連れて」、武者小路実篤、小林秀雄、金子光晴「マレー蘭印紀行」、坂口安吾エッセイ、埴谷雄高エッセイ、野間宏「暗い絵」、現代詩文庫全巻、谷川雁エッセイ、森崎和江、武田泰淳「目まいのする散歩」、武田百合子「富士日記」、吉田健一「詩に就て」、田中小実昌「なやまない」、内田也哉子「会見記」、小島信夫、耕治人「天井から降る哀しい音」、村上龍「5分後の世界」、森茉莉「どっきりチャンネル」、片岡義男


高橋源一郎
一億三千万人のための小説教室