名作マンガの間取り/影山明仁 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

名作マンガの間取り/影山明仁

この本は、住宅設計のプロである建築コンサルタントが、名作マンガに登場する建物を、コマの背景などに描かれる情報を拾い集めるなどして図面に起こし、50案件分をまとめたものである。ちなみに値段の割に、いくぶんサイズの小さな本である。

まず注意すべき点は、この本にはタイトルから分かるように、2つのポイントがあるということだ。
名作マンガと、間取り、の2つである。
こうした場合、人は常に、自分に近しい判断を常識と考えがちである。
マンガと間取りでは、マンガの方がファンが多いと思われるので、多くの人はマンガに比重をおくことがさも当然のように考えてしまうだろう。しかし、そうではないのだ。

この本は、マンガマニアが作成した間取りの本ではない。いわば、間取りマニアがマンガに題を求めた本なのである。そこを勘違いして見当違いの落胆をしてはいけない。

ページ構成は、1案件見開きで、右に物件情報とコメント、左に間取り図となっている。みんなが知っている名作マンガの物件という前提なので、あらすじや内容紹介は一切ない。よって、いくら名作マンガでも、読んだことのない作品は、登場人物も分からないし、当然間取り図を見てもさっぱりである。コメントも同様、作図にあたってのポイントや苦労話、建築家としての突っ込みなどで、また間取り図からの作品分析などが記されることもあり、作品を良く知る者には有用なものも多いが、知らなければやはりさっぱりである。
問題なのは、有用どころか、マンガ派にとっては有害なコメントもたまにあると言うことだ。
作者は、マンガマニアという訳ではないので、マンガ登場物件の分析は素晴らしいが、マンガの背景やストーリー、テーマなどの分析はさっぱりの様子で、むしろ書かなければ良かったのにと思うような見当違いのコメントが散見されるのが非常に残念なのである。本当にこの点は惜しい。
こうした明後日を向いたようなコメントはそのマンガを芯から愛するようなマニアには噴飯ものだろうと思われる。例えるなら、マンガマニアがマンガ愛だけで妄想して描き上げたマンガ登場物件の間取り図が、プロの建築家には噴飯ものであるように。

よって、この本は、一般の間取り図を見て楽しめるような間取り図愛好家が、なおかつマンガ作品も知っているという様な場合でないと、そのポテンシャルを十分に引き出すことが難しいだろう。マンガが好きなだけの人は、多分、読んでもそれほど楽しめないと思う。

また、結構古いマンガが多く、また、マンガと書かれてはいるが、どうやら情報ソースとしてはむしろアニメが中心の気配もする。
番外編が結構楽しかったのは良かった。


影山明仁
名作マンガの間取り