Wii/ラストストーリー/任天堂 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

Wii/ラストストーリー/任天堂

FFの坂口博信(ミストウォーカー)による、Wii待望のRPG。
なかなかまとまらずに発売が延びていたが、ようやく2011年1月下旬に発売となった。
以前から楽しみにしていたので、限定版を予約し、発売日からプレイ。

2週間、40時間ほど掛けてゆっくりクリア。
愛猫みけぼんと一緒にプレイしてクリアした、最後のゲームとなった。

丁寧に作られた、とても良いゲームだったと思う。
コアゲーマー・マニアに向けたゲームではない。ゲームが一般的な娯楽として、良い意味で安易に消費されるためにはどうしたらよいか、と言う事をかなり意図して作られているように感じた。
ゲームは好きだったんだが、大人になってゲームに割く時間もない、情熱もない、根性もない、といった20~40代の特にやや高めの年齢層、それこそ小中学生のゲーム盛りに初代FF・DQの洗礼を受けたような世代を狙った感じだった。

まず業界に蔓延るボリューム信仰を捨て去った。100時間もプレイしなければクリアできないゲームではまずい。多分ストーリーの本筋を楽しむだけなら20~30時間でクリア可能だろうというボリュームにシュリンクしてある。これを実現するために、各所に工夫がある。

まずストーリーや展開を説明する会話シーンを、ダンジョンやバトルシーンに埋め込んだ。これによりノンストップでの進行によりエピソードの消化が凄くスムーズになった上に、冒険の臨場感や仲間とのコミュニケーションのライブ感を醸し出す事にも成功した。ただし、反面、特にバトル中での聞き漏らしや、移動などに伴う上位イベント発生による会話キャンセルなどによる読み漏らしなどが起こってしまう点はデメリットだ。しかし多分そうした部分も含めてのリアル感の演出と言う事で割り切ったのだろう。

次に、経験値稼ぎをほぼ不要の調整とし、そしてクリアダンジョンでは経験値がもらえないという事で基本的に禁止し、ボス前などには、敵が無限に湧き出すサモンサークルというレベル上げポイントを設置した。これにより経験値稼ぎに時間を掛ける必要性が無くなった。

そして、アイテム、装備品、魔法などRPGでごちゃごちゃしやすい要素を、吃驚するほど思い切って簡素化し、記憶や学習に頼らず、その場で判断できる分量に絞り込んで設計されている。アイテム装備系は種類を思い切って絞り込み、リストのソートなども導入し、またオートイクイップも実装されている。その一方で装備品の見た目の拘りをかなりカスタマイズできるようにして、プレイ要求のカウンターバランスを取っているようだ。戦闘後の状態異常とその回復系アイテムや魔法は全て排除。魔法自体も、キャラ毎にリモコンの十字キーに割り当てられる4つのみと極限まで絞り込んである。
プレイヤーに無言のプレッシャーをかける図鑑やタスクリストなどは敢えて実装しなかったのだろう。やりたい人がやりたいだけやればよいと言うスタンスだ。

ダンジョンは基本的には最初の俯瞰図で全て把握できる程度+αの広さ複雑さのバトルフィールドで構成され、それらを順に組み合わせて全体のダンジョンが表現され、こまめに配置されたセーブポイントとオートセーブにより、ちょっと空いた時間で続きを少しだけしようか、という気にさせるように配慮されている。
もちろん全滅時のリトライも迅速だ。そもそも坂口ゲーの特徴でもあるが、まずタイトル画面が出るまでが早い。メーカーロゴや無意味なミドルウェアロゴなど皆無である。起動後即座にタイトル画面、セーブデータを選んで即開始である。本当にこの点はどれだけ評価してもしすぎる事はないと思う。セーブデータ選択時にあらすじが表示されるのも親切だ。

肝心のバトルは、スティックによるオート攻撃と仲間のAI行動で、かなり易しめの調整であるが、主人公エルザの特殊能力ギャザリングや風魔法による魔法拡散などを上手く使って作戦奏功に酔うこともできるし、ひたすらゴリ押しリトライで突破することもできる。先にも触れた会話システムで、バトル中に仲間と連携している感じがよく表現されており楽しい。バトルアクションも上に挙げた特殊能力以外に、ハイド&スラッシュやガード、垂直切りなど、多彩で工夫しがいがある。グラフィックスもモーションやエフェクトなど割とそこそこ派手で楽しめる。

キャラクターは、良い意味でシンプルかつ地味にまとめられている。突飛なキャラ・神経に障るキャラがいないので、安心してプレイできる。それでいて、各キャラの個性はきっちりと立てており、それぞれ印象に残る。登場キャラクター達の年齢層が若干高めになっているのもターゲットに合わせての事だろう。良い声優を使って丁寧に演じているので、セリフの表現としてはかなりレベルが高いものとなっている。

ストーリーは王道中の王道といった展開で、安心して冒険活劇を楽しむ事ができる。若干突っ込みたくなるような無理展開も無いではないが、それは坂口節としてのある意味ファンサービスなのかな、とも思った。随所にあるベタなギャグも同様に坂口節である。
シナリオの展開自体はかなりのボリュームがあると思う。とくにボイスの量は壮絶だ。しかしそれを上でも書いたようにかなり圧縮して入れてあるので、短時間で充足感が得られる。

音楽は植松伸夫で、まずまずではないか。サントラで聴く方が良く聞こえる。

ムービーや映像シーンはかなり凝っている方だろう。素直に綺麗な画面だったと感じた。個人的には雨のシーンでのレンズに落ちた雨粒のような表現が好きだった。メトロイドプライムを思い出した。
イベントムービーへの装備反映は面白いが、シリアスシーンでうっかり全裸だとちょっと雰囲気が台無しだ。

オンライン対戦も結構楽しい。特に、定型文ボイスチャットに本編での全キャラボイスを使用可能というシステムは、革命的な発明ではないか。これが本当に面白い。ただし裏返せば壮絶なるネタバレシステムという諸刃の剣ではある。

不満点ももちろんある。
まず、ジャッカルとセイレン、クォークのエピソードイベントを入れるべきだったろう。当初の予定にはあったのだろうが時間的予算的にカットだったのかも知れない。パッケージにデカデカと描かれた神獣の使いもほとんど出てこずカットされている節があった。
仲間との絆がテーマではあるが、仲間相互の絆はよく表現されていたが、主人公エルザと仲間達との絆が、やや薄いように感じた。もう少しエルザと仲間の相互作用を増やしても良かったと思う。またカナンとの恋が、やや説明不足か。
また、バトル会話の、特にギミック説明系のものが、やや繰り返しがしつこくて気に触るときがあった。もうすこしパターンがあれば良かったかも知れない。

全体としては、かなり楽しめた作品だと思う。
システムもキャラもこれ一作で終わりでは勿体ない。ぜひ次作で活かして欲しいと思う。

最後にネタバレあり順不同で印象に残ったシーンを。

最初にカナンと出会う街中のシーンの雰囲気は良かった。逃走イベントでは無理矢理手をつなぐボタンを割り振ってイコ方式の操作だと感情移入度が上がったかも。星見の塔の星探しも良かった。
クリア後のエピソードのカナンとの結婚式で誓いを拒否したときのカナンの怒りの形相が忘れられない。というかゲームオーバーってどういう事なの。そう言えば主人公とヒロインが一夜を共にした表現が入るのはRPGでは珍しいように感じた。

タシャとの決闘はまさに王道という感じで良かった。もちろん港での助太刀シーンもよい。タシャは基本的に最初は好かれないが、後で人気が出るキャラとして格好良く上手く作ってあると思う。

海に投げ出されて溺れながらカナンを探して漂流するシーンの演出は良かったと思う。船中でもそうだが、視点の揺れは結構臨場感を盛り立てる。

宿でユーリスが眼帯を取るシーンは、結構胸中ざわつくものを感じた。それがラストにも繋がっているので印象深い。

エンド前、ジャッカルをクォークと見間違えるシーンは印象深かった。特にプレイ当時より、今になってより一層そう思う。そしてクォークの墓石の前に皆が集まる夕焼けのシーン。

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