宇宙の白鳥(スワン)/山本ルンルン | 読んだり観たり聴いたりしたもの

宇宙の白鳥(スワン)/山本ルンルン

仕事場に3巻セットがあったので、何気なく手に取ってみた。
聞いた事もない著者の女の子向けコミックスのようだった。うる星やつらのランちゃんのようなキャラ絵は見た事あるような無いような。

で、読んでみると、これが凄い。
朝日小学生新聞の連載らしいが、全ページフルカラー原稿で、彩色のセンスが抜群だ。絵も細部まで細かく描き込まれており、子供向けだからと手を抜いているような気配は微塵もない。独特のタッチは好き嫌いあるかも知れないが、キャラも描線がシンプルで綺麗で、非常に可愛らしい。どこでも切り取ったらそのままポストカードになりそうな雰囲気とセンス。

ストーリーは軽いタッチのSF&学園物といった趣で、普通の小学生がひょんな事から宇宙パトロールの見習い候補生になってしまい、小学生としての生活と宇宙パトロールとしての冒険との二重生活を頑張る、という様な話である。
広大な宇宙が舞台なので、いろんな特徴を持った異星人や異境の星が登場し様々な事件が起こるという、21エモンのような雰囲気で飽きさせない。

ただ単に、SFドタバタを描くだけではない。主人公の星野コロナを宇宙パトロールに推薦した月島ランのオタクでマイペースな独特の人物造形もそうだが、実生活の小学校での生活で描かれるリアルな小学生としての事件や悩みや、そこまで至らないようなちょっとした雰囲気などが、寓話的にかつ写実的に丁寧に配置されており、全体として非常に厚みをもった存在感のあるベースストーリーとなっている。この安定感のある基盤があるから異星人とのドタバタが非常に際だって生きてくるのだ。しかもユーモアだけではなくかなり毒のあるテーマ・表現も扱っており十分に大人の鑑賞にも堪える内容である。

他人に気を配って何事にも一生懸命に頑張るコロナと自分本位でマイペースなランは、どちらも対等に描かれている。そして彼女たちのささいな違いなど吹き飛ぶほどに形態、行動、習慣、何もかも異なる異星人達。ランにも異星人達にも翻弄されるコロナの経験を通して、どんな存在も皆それぞれで良いじゃないか、という暖かい容認のメッセージが伝わってくるように思われる。

と言う訳で面白くて3巻すぐに読んでしまった。
是非とも他の作品も読みたいと思う作家であった。

山本ルンルン
宇宙の白鳥(スワン)