NHK/世界ゲーム革命 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

NHK/世界ゲーム革命

一般向けにテレビ番組や新聞雑誌などで展開されるマニア系の題材は、ほぼ100%、そのマニアが見ると噴飯ものになっていると言うのは当然の理なので今更驚きはしなかったが、それにしても一般向けと考えても底が浅くまとまりのない内容であった。

程度の低いディレクターが結論ありきで企画をでっち上げた挙げ句大手に取材を断られ、やむなく映像をつないでどうにかドキュメントらしく体裁を整えたような作りだった。もしくは、きっと二ノ国はジブリによるアニメ版をNHKで企画中なのだろう。

そもそもタイトルからして意味不明である。ビデオゲームの歴史はそれ自体が革命の歴史である。常に革命的なイノベーションによる遊戯を提供し続けてきたのがコンピュータゲームという娯楽であり、今もそして今後も背負う宿命である。ゲームが革命で無かった時などない。
ゲームが映画を抜いたという産業的な意味合いだったのかも知れないが、衰退産業と比べても仕方がない。

焦点もぼやけてしまって、何が言いたかったのかはっきりしない。
日本はお家芸のゲーム産業の死守を提言したいのか、次世代的ゲーム体験が人間にもたらす影響を考察したいのか、ゲームという娯楽の社会的存在意義を調べたいのか、日本と世界とでのゲーム制作手法の相違について議論したかったのか、確かにどれも複雑に関連し合っているため1つを語ると他も語りたくなるのは分かるが、1時間しかない番組でダラダラやっても仕方がない。もっと切り口を絞った方が良かっただろう。

そのような珍しい人がいたとして、この番組を見た全くのゲーム素人はどのような感想を持つのだろうか。
「戦争とか人殺しのゲームが映画より売れてるんだな。それが進化してコントローラとか要らなくて、最後は脳で考えるだけで直接操作できるんだな。現実の世界と区別できなくって、止められなくなって帰ってこれなくなるから怖いな。そもそも戦争ゲームとか訳が分からないビカビカしたゲームばっかりやってる人は近くにいたら怖いな。でもそんなゲームはドカドカ売れるから世界中で大金を投じて競争して制作しているんだな。海外では凄い技術でいろいろ効率化してるみたいなのに日本は職人芸だよりじゃ太刀打ちできないだろ。しかもアニメの人にまでぼろくそに言われてたからきっとあのゲームも面白くないんだろうな。日本は不景気でダメだけど、ゲームまでダメになったんだな。毎日ゲームするのを仕事にしている若者は将来の事とか考えた事ないんだろうな」
と言う所が自分の推測だが、実際はもっと違うのかも知れない。しかし、どう考えてもゲーム自体にネガティブな印象を与えているように思われる。にもかかわらず世界でのビジネス的な衰退を同時に憂うのはおかしいだろう。

前にも書いたかも知れないが、クールジャパン戦略など全く不要である。税金の無駄遣い以外の何者でもない。
まず、ゲームだろうと漫画だろうと、しょせん生活必需品ではない単なる娯楽なのであって、政府がその存在について規制以外の内容で口出しすべき事ではない。ましてや奨励など愚の骨頂である。その理由は、1.娯楽品は必需品ではないので市場予測・将来予測が不可能。2.娯楽品には必要十分な製品性能というものがないのでコストおよび利益の予測が不可能。3.娯楽品の製作は才能のある極少数の指揮者と少数の一般的作業者とでなされ、その利益配分は指揮者およびメーカーに集中するため、産業規模(特に利益規模)に比して雇用が少ない。4.娯楽品は優れた物だけが売れ、詰まらない物は売れない。優れていない物を売ろうとする事を許せば市場自体が消滅する。等である。ゲーム産業に政府の援助など百害合って一利なしである。

ゲーム製作を効率化する事はコスト面で非常に重要である。しかし大事なのはコストがかからず面白いゲームが作れるかどうか、と言う事である。そもそも面白くなければいくら効率的に作られても意味がない。共通したエンジンを使うという事は、ゲームシステムのベースが似通っていると言う事であり、それはゲームの新奇性や意外性を殺す諸刃の剣にもなる訳である。またいくら効率化しようと予算が高額化する欧米のゲーム製作では、予測の付かない新奇的ゲームより、ヒットゲームの改良という安全策がとられやすい。実際、欧米のヒットゲームは銃撃ゲーム、スポーツゲーム、レースゲームとパターンが決まっている。そしてゲーム性は怖くて変えられないからコストの高い見た目の高詳細化で差別化しようとするため予算は鰻登りという悪循環で、たしかに市場規模で見れば莫大な売上を叩き出しているかも知れないが、まともに利益が出ている所はいくつあるだろうか。もともと娯楽産業はある意味ギャンブルだが、特に予算に対する利益の比率を考えればこれは異常なほどのギャンブル性だろう。

突っ込みたい所は無数にあるが、書いていてむなしくなってくるので止めよう。
番組としてはダメだが、随所で貴重な映像が見られたのは面白かったので見て良かったとは思う。