恐るべき旅路 火星探査機「のぞみ」のたどった12年/松浦晋也 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

恐るべき旅路 火星探査機「のぞみ」のたどった12年/松浦晋也

はやぶさに非常に感銘を受け、ネットでいろいろと情報をあさったあげく、何かまとまって紙で読める物はないかと探したが、当然帰還すぐでは完全なはやぶさ本はまだなく、やむなくと言う形で、見つけたこの本を図書館で予約した。
なぜか絶版のため図書館での予約人気も高くなかなか回ってこない内に、そもそものはやぶさ本も相次いで出版された訳だが、やっと来たので読んだ。

著者は宇宙関係に強いサイエンスライターらしく、内容はしっかりしていてかつ面白い本に仕上がっていた。

火星大気の観測を目指した日本最初の惑星探査機のぞみの旅路は、はやぶさに勝るとも劣らぬ苦難の連続であったが、彼らが背負うその宿命は、日本の低予算ぶりが招く原罪として、生まれながらに避けられぬものであった事がよく分かった。
むしろ、そのような状況下で多少なりとも成果を出し続け、はやぶさのような偉業まで成し遂げる事のすごさをひしひしと感じた。

比較的大予算で多人数で書類ベースでプロジェクトを進めるNASA方式と、低予算・少数精鋭・属人主義で進める日本方式の、長所短所についていろいろ興味深い思いだった。

例えばゲーム開発などは、昔は日本方式から始まった訳だが、ゲームが高度化するにつれ、ソフトハウスは巨大企業化し、プロジェクト規模は膨れあがり、予算は爆発し、NASA方式での開発に極めて急速にシフトしてきている。
しかし、ゲーム開発は惑星探査と異なり、コストと成果の間にほぼ因果関係を見いだせないという特性がある。
よって、合併を繰り返し体力を付ける事で何とか生き延びているゲーム屋だが、そんな単純な戦略ではいずれ破綻する事は火を見るよりも明らかだ。もちろん、駄作しか作れない大手ゲームメーカーなどはどんどん潰れてしまってかまわないのだが、一部の才能のあるデザイナーやクリエイター達が、なんとか日本方式で生き延びられるような土壌を作れない物かと思う。

逆に宇宙探査も、日本方式では対応できない規模になる時が来るだろう。

どちらにも言えるのは、プロジェクトを少数精鋭主義で進められるような、ベース技術のブレイクスルーが必要である、という事だと思う。そう言った点に集中して技術投資することが今後重要になってくるだろう。

おまけ:カバーの写真はあさりよしとおらしい

松浦晋也
恐るべき旅路 火星探査機「のぞみ」のたどった12年