ポトスライムの舟/津村記久子 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

ポトスライムの舟/津村記久子

芥川賞受賞作。結構前の週間ブックレビューで見かけていた。図書館で課題図書だったので借りて忘れていたが、返却期限が来ていたので読んでみたら結構面白かった。

現実とは事実ではなくて主観=観測である、と言う事がよく分かる小説だった。
この小説のテーマは決して普遍的なものでなく、主人公の感性も境遇も、かなり特殊で偏っていると思うが、だからこそ、逆にファンタジーとしての魅力があるのでは、とぼんやり考えながら読んだ。

2本入っているが、どちらの作品も、女性主人公が職場・そして仕事というものを通して世間を切り取るそのアングルがかなり極端という点が似ており、その辺がテーマなのかなとは思うが、結局は極私的な感受性のタイプによって感情移入できるできないが分かれ、ひいては作品の存在意義自体も問われるような作品と思う。

主人公の境遇が厳しいものであるのは、主人公の頑なで頭でっかちで閉鎖的な主観のせいであり、それが世界の絶対的な姿でないのにと頭をかきむしりたくなる読後感の人がいる一方で、それは分かっているが、だからといって主観以外の基準を人は持ち得ないのだからそれは無意味であるとして深く受け入れる人もいるだろうと思う。

だから、一歩引いてファンタジーとして眺めればある意味面白いし、描写や展開は丁寧なので、割と読ませると思う。

ポトスライムと聞くと、どうしても、スライムがメインで聞こえて困る。ぽとりと落ちるスライムがイメージされてしまう。

津村記久子
ポトスライムの舟