スカイ・クロラ | 読んだり観たり聴いたりしたもの

スカイ・クロラ

お盆休みを撮った事もあり、今日は妻と久しぶりに劇場に足を運んだ。スクリーンで映画を見るのは数年ぶりの事。たまには良いもんだ。

この映画を選んだのは、もちろん原作が好きであるという理由もあるのだが、それ以上に、この10月に発売となる、表題映画を題材としたWii用ゲームに興味があるから、という点も大きいのであった。

さて、映画についてであるが、面白かったし綺麗だし、まま楽しめたのではあるが、はっきり言って、これは原作を全く読んだ事がない人は、ひょっとして観ても面白くないのじゃないだろうかと思う。

監督の押井さんの作風などはあまり詳しくないのだが、意味ありげな静物の止め絵や、やたら長い間、短い動作のフラッシュバック、印象的な輝度を落としたバックに淡い光彩の画像などで、イメージを紡ごうとしているような感じだった。しかし、そのイメージを伝えよう伝えようという表層的な意図ばかりが伝わってきて、逆に伝わらないもどかしさを感じた。

原作において重要なのは、主人公達の人間関係や戦争企業というような世界設定ではないし、ましてやキルドレとして生きる苦悩などではない。原作の主題は、人が空を飛ぶ事である。機械を使って空を飛ぶ、空への熱望である。代償として、人を殺し、そして殺される事さえその思いの前には些事なのである。この簡単で異常な、ある意味もっとも人間的な渇望の結晶のような意志が、映画の面々からはあまり感じられなかった事が残念であった。

映画は、あれはあれで、ああいう表現の仕方もあると思うし、あれを好む人もいるだろう。
でも、自分が観たいのは、もう少し違う物だったかも知れない。
もっと、飛行機の、飛行の感覚を伝えて欲しかった。飛行シーンをもっと入れても良かった。なんなら最初から最後までそれでも良いぐらいである。

ストーリーは、大した意味を持たないのでどうでも良いと言えば良いのだが、原作とは若干変更になっているようだ。特にラストの辺りや、それにまつわる解釈などがオリジナルである。この辺も賛否両論かも知れないが、まあ、せっかくならいろんな解釈を観られた方が面白いだろうと思う。
そう言えば、スタッフロールが出始めるとすぐにそそくさと退場する人がチラホラいたが、ロール後に上記の重要なシーンが入るので、灯りが点くまで着席しておいた方がよい。

後、この映画では、戦闘中の通信は英語で行う事になっているみたい(戦争企業が外資という事?)で、主人公達も英語で通信して、画面の下部に日本語字幕が出る、という構造になっているのだが、結構良く聞いていると、字幕としゃべっているせりふが微妙に違っているようだ。まあ、それは良くある事だと思うけど、ラストシーンで、「ティーチャーを撃墜する!」と字幕が出ていたのに、台詞は「I'll kill my father!(やや適当)」だったのには驚いた。
ティーチャー(そういえば原作ではティーチャなのに伸ばしている)を、象徴として、ファーザーと表現するというのは、この物語の構造として非常に興味深い表現だと思うし、いろいろ意味も取れると思うのだが、原作も知らず、何の前知識もなかったら、結構気付かないんじゃないかなあ、と心配した。パンフは買ってないけど、パンフにはちゃんとこういう細かい事も解説してあるんだろうか。

音楽はかなり素晴らしい物だった。特に、冒頭のシーン、ティーチャーのドッグファイトシーンでは、映像と音楽との組み合わせがバッチリでちょっと感動した。と言うより、この映画でもっとも感動するシーンは、この冒頭である。