カクレカラクリ/森博嗣 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

カクレカラクリ/森博嗣

読み出してすぐに目眩を覚えた。平易でのっぺりとした文体。陳腐な言い回し。なるほど仕事で書いているな、と丸分かりでがっくり来た。コカ・コーラとのタイアップとかドラマ化とか帯に謳ってあったが、その犠牲は大きかったという事だ。

しかし、内容は面白くない訳でもない。そのためなんとか中盤過ぎまで読み進めて、ふと気付いた。そうか、これはジュブナイルなんだと。そして対象読者も、実はずっとずっと低年齢層に置いている。そう考えると文体もあまり気にならなくなった。そういう縛りなら仕方ないではないか。コカ・コーラというのもこの縛りで禁じられたタバコの代替となるシンボルなのだろうと思った。

しかし、寧ろ低年齢向けでは、あの石版の謎はかえってすぐに解かれてしまのではという懸念が。なぞなぞパズル好きの少年少女には、あれは謎でもなんでもないだろう。自分もそうだったが、イラストを見た瞬間、答えが分かるはずだ。それではやや興ざめというモノである。もう少し見せ方に気を配っても良いと思う。

あれほど引っ張った、カクレカラクリの作動の現実性については、結局お茶を濁して終わりというのも肩すかしだ。しかし、本当に120年生き続けるシステムの設計を行うのは天才しかできない訳で、詳細の解説や描写を敢えて行わなかったのは、むしろ工学者としての良心故だったのかも知れない。半端な物を出されても物語の魅力を減じるだけだからだ。

他は全部伏せているのに、タイアップしているコカ・コーラだけが固有名詞で寧ろ違和感ありだ。チョロQだって、そのまま書けばいいのに。

確かにお話は面白かったが、ジュブナイルとしてはようやく及第といったところ。その敗因は著者が理知的すぎる点だろうね。

森博嗣
カクレカラクリ