GC/ゼルダの伝説 風のタクト/任天堂 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

GC/ゼルダの伝説 風のタクト/任天堂

有名RPGのGCタイトル。賛否両論のトゥーン調画像で有名。

大変面白かった。連日コツコツと1ヶ月半程掛けて堪能してクリアした。プレイ前からタクトの微妙な世評は耳にしていたので若干心配はしていたのだが、そんな心配は全く無用だった。素晴らしい冒険だった。批判されている点も判らないではないが、自分には気にならなかった。むしろ時のオカリナ、ムジュラの仮面とどんどんパワーアップしていると実感した。

まず、絵が良い。ちょっと癖のあるアニメ調のキャラクターや背景画は、取っつきにくいと感じる向きもあるだろうが、馴染んでみると心地よく寧ろ世界観に対して自然な印象を受けた。ただ、リーデット(叫び声で主人公をすくみ上がらせるアンデッドモンスター)だけは、可愛くなりすぎて、恐怖のオーラが失われていて、この点だけは残念だった。時のオカリナの時などは、リーデットに抱きつかれたら涙が出そうになった物だ。

今、ゲームはどんどんリアルな世界を目指している。PS3などに代表される次世代機もそうした表現を実現できるように性能を上げている。それを映し出すTVはプログレッシブにハイビジョンになり信号はデジタルHDMI端子で出力される。サウンドは5.1chでキャラクターの台詞は豪華声優陣のフルボイスが当たり前。
しかし、開発費を天文学的に押し上げるだけのこうした要素のみが本当のリアルさをもたらすのではない。本当のリアルな印象をもたらすのは感覚器官への刺激ではなく、脳が作り出すイマジネーションなのであるから。

タクトの海は青ベタだ。誇張でも何でもなく、本当に、ベタっと単色の青が塗られた平面が広がっているだけなのだ。さすがにこれにはゲーム開始当初面食らったが、この世界になれてしまうともう海にしか見えない。寧ろプレイを続けると、これは敢えてこうしているのだという事が分かる。そしてこの世界で船を手に入れ青ベタにこぎ出すと、もうそこは大海原にしか感じられない。うねりや波模様が表れる事もあるが、風を受けてふくらむ帆や波をかき分けて進む船の揺れなど、細かな表現の積み重ねがこのリアル感を出しているのだと思う。タイトルで分かるように、このゲームでは「風」が重要なキーワードであるが、常に画面を吹き抜ける風の表現(この風の表現は、Wiiスポーツのゴルフなどに活かされている)もこうした感覚を生み出す重要な役割を担っていると思われる。

高所恐怖症でなくても、高い所に行くと足がすくむ感じを受ける事があるだろう。自分の場合は高い所は平気だが、高所から落ちるような状態の時、下腹部がヒヤッと力が抜けるような感じを受ける事がある。しかし、映画に没入してこの感覚を味わう事は希だ。テレビや映画などの映像でこの感覚を受けたのは多分過去に1,2回だったと思う。アニメでは皆無である。しかし、これはゲームではしばしば感じるのだ。特にゼルダシリーズはキャラクターを操作していて高い所から落ちるような時にはいつも感じる。これは突然の落下にびっくりしたという反応ではないのだ。これからここを飛び降りる、と考えてその通りゆっくり実行した時でさえ、主人公キャラが自由落下を始めるとヒヤリと感じずにはいられない。時のオカリナやムジュラでも感じたが、タクトでは特に強烈であった。これはリアリティ以外の何ものでもないと考える。もっとリアルっぽい詳細な背景で詳細なキャラクターを操作するゲームもたくさんある。しかし、画像の詳細さとこうした感覚とは特に関係は無いようで面白い。他にこうした感覚を受けたゲームはトゥームレイダーのいくつかのシリーズぐらいであろうか。これは自分の仮説に過ぎないが、こうした感覚を受けるゲームでは、多分、落下を始める際のキャラクターモーションとカメラの位置とその軌道が、凄く微妙な関係になっているのだろうと思う。リアルさとは、画像を詳細に究めても、物理演算でキャラクタの動きを計算しても、賢いAIでオブジェクトを制御しても、そうした機械的な計算だけでは得られない物なのだろうと思う。

謎解きや戦闘はやや易しめの難易度でそう悩む事無くのんびり楽しめた。また6拍子のテーマ曲は良かったし、エンディングのメドレーはとても秀逸だった。キャラクターの声の調子を文字の大小で表現するシステムも良いと思った。敢えて難を挙げると、ややダンジョンが少ないかな、という点だろうか。

好きなキャラクターは、テトラとメドリ。

次作のWii版ゼルダの伝説 トワイライトプリンセスでは、この素晴らしいトゥーンキャラが使われていない。欧米であまり受けが良くなかった事が原因らしいが、大変残念な事である。

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ゼルダの伝説 風のタクト