2999年のゲーム・キッズ 完全版/渡辺浩弐 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

2999年のゲーム・キッズ 完全版/渡辺浩弐

SF設定の掌編小説集である。

この本を読むに先立つ事数週間前、ある1つのゲームをプレイした。それは、プレイステーションコミック第3弾と銘打たれた「2999年のゲーム・キッズ」であった。形式は選択肢などプレイヤーの関与が極端に少ないサウンドノベルと思えばよい。コミックというカテゴライズと定価2000円という設定が示すように、PSのゲームソフトとしてはボリュームも少なく、今ひとつと言った印象であった。

しかし、内容と見せ方は割と良かった。
設定はこうである。2999年にロボット達は一つの「街」の中で完全充足して生活していた。自らを人間だと信じて。街の外には一歩も出られず、街の中心の「塔」の上層階に行った事がある者は居ないが、誰もそんな事を表立って気にすることもなく日々生活していた。主人公シカもそんな街の住人の一人であった。平凡な生活。そして平凡な生活の記憶。しかし、なにかが剥がれるように少しずつ日常が崩れていき…。というサスペンスタッチのSF作品である。味のあるアニメ調のキャラクターと割合工夫され作り込まれたエフェクトで割と引きつける作品になっている。特に1匹のシズクホタルが街を舞うシーンはかなり素晴らしい出来だと思われた。

だが、設定定価の関係上低い予算のためか、ボリュームが極めて少ない。もう少し話があってもいいのにな…。

そこで、この書籍である。ゲーム版シナリオを内包し更に他の話を大幅加筆して1冊の本に仕上げた物だと聞いて読んでみたのだ。たしかにその通りで、そこそこ面白い物ではあるが、結局ゲームで感じた欲求不満が解消される事はなかった。

本自体は、どことなく星新一のようなテイストである。複数の人物がいろいろな視点から物語る掌編が多数集積して、一つの世界を織り上げている。前半の1/3ほどがゲーム化されたシカの話の周辺部であり、後半はもう全然別の話となる。そして淡々と小話が続き本は最後のページを迎える。完成した世界と読者は取り残されたままだ。シカの話の解釈、世界の解釈、話の続き、プロローグ、エピローグ、その他世界の詳細について、読者は自分で考えざるを得ない。
結局この問いに答えを出すのは読者自身となる。「ゲーム・キッズとは何か?」

エントロピーなどSF的に使用している科学用語の誤用はご愛敬の範囲であるし、多くの読者にとって作者の言いたい事は分かると思うので問題はない。

渡辺 浩弐
2999年のゲーム・キッズ 完全版

SCE
プレイステーションコミック第3弾「2999年のゲーム・キッズ」