Wii/Wiiスポーツ/任天堂 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

Wii/Wiiスポーツ/任天堂

Wiiスポーツというゲームは、何と言って良いか分からない不思議な感覚のゲームだ。
一応、スポーツとカテゴライズしているが、単なるスポーツゲームではないのだ。それは多分多くの人が既に知っているだろう。CMでも喧伝している通り、直感的に体を動かす事が今までのスポーツゲームと違うんだろう?でも結局はインターフェイスの違いだろう?そう早合点するかも知れない。

しかし、事はそう単純ではないのだ。

昨今のスポーツゲームは、その存在の多くを、実在のプロスポーツに負っている部分が大きかった。プロ野球を題材にした野球ゲームしかり、NBA選手が登場するバスケットゲームしかり。プロスポーツにはファンが多い。そのファンの多くは、そのスポーツのファンであるのだが、より正確にはメタスポーツのファンであることも多いと思う。野球が好きなのではなくて、プロ野球が好きなのだ。または阪神のペナントレースの行方を見守るのが好きなのだ。あるいは高校野球の選手達の織りなす熱いドラマが好きなのだ。

だから、従来のスポーツゲームは、実在のプロ選手登場させ、簡単操作で華麗なテクニックを繰り出し、贔屓のチームでリーグを争う所がゲームのポイントだった。いわばメタスポーツゲームだろう。その点、Wiiスポーツは、メタスポーツゲームではない。スポーツのゲームである。野球なら野球、テニスならテニスのプレイ自体を楽しむゲームなのである。自分でラケットを振ってボールを打つ、その行為の楽しさを純粋に楽しむ事がWiiスポーツの目的である。

Wiiスポーツでは、リモコンを使った直感的な簡単操作が売りである。
例えばテニス。リモコンをテニスラケットのグリップに見立て、握って、振る。ボールが飛んでくるタイミングに合わせて、ただ、振る。操作はこれだけだ。極めて簡単である。年齢・性別・これまでのゲーム経験に関係なく、誰でもすぐにプレイできる。

こんな説明は嫌と言うほど見聞きしただろう。しかし、これはWiiスポーツというゲームのほんの入り口しか説明していない。

まず、誤解を解く所から説明したい。それは、Wiiスポーツの操作は、めちゃくちゃ難しいのだ、という事だ。

リモコンを振ればボールを打てる。それは本当だ。しかしそれは、多くの人がちょっと練習すればテニスラケットでボールを打てるようになる程度のレベルの操作である。一言でラケットでボールを打つと言っても、プロの目の覚めるようなパッシングショットから、素人のようやく打ち返したような球まで幅広いように、Wiiリモコンで打ち返す球も、振り方一つで、ほんの一瞬の振りのタイミングで、ひねりで、位置で、非常に幅広く打ち分けられるのだ。
そして、このうち方を習得するには、ひたすらスイングをして体で覚えるしかない。

今日始めた初心者同士でも楽しくラリーできる簡単操作である一方、実際のテニスの試合運びを意識して自分の思うままの球を満足に打てるようになるには、かなりの努力と練習を必要とするのだ。これは驚くべき設計だと思う。

そして、自分の思う通りにショットが決まった時の爽快感は何とも言い表せない。これは昨今のスポーツゲームの爽快感ではない。むしろスポーツの爽快感に近い物だ。そして、元来ゲームが持っていた面白さのエッセンスがここにあると思う。

Wiiスポーツでこのような感覚を覚えるのには、実際に振るというインターフェイスの他に、プレイヤー自身がプレイするという点も重要だと思われる。Wiiスポーツでは、操作するキャラクタはリアルなプロ選手ではなく、Miiと呼ばれるプレイヤー自身のデフォルメされた似顔絵人形なのであるが、こいつは、どんなリアルな3DCGキャラクターでも醸し出せない、抜群の一体感をプレイヤーに感じさせるのだ。特に自分で楽しんで作った自分のMiiを使い続けていると、曰く言い難い愛着がわき、不思議とこの単純な造作の人形が自分自身としか思えなくなってくる。

これは人間の持つ想像力を十分に刺激する設計になっているためだと思われる。単純な線で描かれた漫画のキャラクターがまるで生きているかのような躍動感を持つのと同様、単純で簡素な画像で作られたMiiは、常に自分の設定したフィルタを通して一挙手一投足を補完しながら感じる事になるからだ。さあどうだ、こんな「リアル」なスポーツゲームは見た事がない。画面にいるのは自分で、自分で振って球を打つのだから。

所詮はコンピューターゲームである。本物のテニスの持つ感覚を完全にリアルに再現することはできない。むやみに詳細な画像などでリアルさを追求すればする程、現実との違和感ばかりを感じるようになるのがオチである。
しかし、テニスというスポーツのもつ面白さのエッセンスをリアルに再現することは出来るのだ。しかも、誰でもそれを感じられるように敷居を下げて。そしてリビングで。Wiiスポーツのテニスは、リアルなテニスのシミュレーションでは断じてない。ルールも操作できる行動も、明らかに本物のテニスとは違うし制限されている。これまでのテニスゲームと比べても明らかに簡素すぎるほど簡素だ。しかし、これほど「テニスっぽい」感じがするゲームはおそらく無かっただろう。

Wiiスポーツというゲームは、スポーツの裏も表も表現している。単にプレイ時のテクニック云々だけに焦点を当てるのではなく、スポーツには楽しんで一緒にプレイする仲間がいること、それを見て一緒に楽しんでいる仲間がいること、上手くプレイできない悔しさをバネに練習して上達することの喜び、等々。

ハードもソフトも十分に練り込まれたこのゲームは、これまでのスポーツゲームとは質が違うと言う他無いほどレベルが飛び抜けている。むしろ、Wiiスポーツというジャンルと表すのが最適だと思われて仕方ない。

 
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