新シルクロード「第2集 トルファン 灼熱の大画廊」/NHK総合 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

新シルクロード「第2集 トルファン 灼熱の大画廊」/NHK総合

2005年2月20日放映

トルファンは豊かなオアシスの街だった。天山山地の南、火焔山(西遊記に登場するあの山)の南に広がる盆地だ。シルクロード天山南路の主要な中継地として古来栄えてきた。北方よりモンゴルの末裔が、東より漢民族が、そして西よりインド・ペルシャなど多数の民族がその地で拮抗し、そして融和してきた。

それを見事に表しているのが、ベゼクリク千仏洞にかつて存在し、今回取材班と龍谷大学、そして各国の協力で完成した、仏教美術の壁画たちであった。

もともとマニ教信であったトルファンの王族が、仏教の伝播とともに帰依し、11世紀頃に山裾に日干し煉瓦で作った巨大な回廊に一大仏教壁画を作り上げた。ベゼクリク千仏洞と呼ばれるその仏教美術の運命は、しかし悲壮であった。やがて到来する、偶像崇拝を禁ずるイスラムの波にさらされ、次々に破壊されていった。砂に埋もれ生き延びたわずかな壁画は、近代の列強探検隊が、その保存を名目に、(今キトラでやっているように)持ち帰ったのだ。

こうして世界中に分散した壁画の破片(失われた物も多い)から復元された「誓願図」と呼ばれる、釈迦の前世を描いた15枚の壁画は、その登場人物として多種多様な民族が登場している、という点において実に刮目すべき内容だった。

現代でもそうだ。トルファンの市街を行き交う人々は、多くの民族の面影が混じり合い融和していた。素晴らしいと思った。世界中がこのような融合を迎えた暁には、どれほどの数の難題が直ちに霧散する事だろうか。かつてこの地を訪れた古代中国の使者も同様な感想を書き残していたのが驚きでもあり、かつ残念でもあった。

火焔山を仰ぎ、世界でもっとも暑い地域の一つであるかの地ではあるが、とうとうと流れくる天山の雪解け水が育む豊かな緑が、それゆえ逆に際だって豊かさを感じさせるような気がした。豊かさとは決して量だけではかれる物ではなく、質ではかる物なのだろう。

このシリーズでは、25年前の旧シルクロードシリーズの同地域分の放送を、同日に続けて放送する、という粋な作りになっている。
これがめっぽう面白い。

確かに新シリーズは、映像も音楽も素晴らしい。しかし、旧の「探検記」然とした内容も捨てがたいのだ。また、25年の歳月を経て、変わるもの、変わらないものがよく分かる。同じ日に放送する事で、これらを見比べいろいろ思い返しながら想像して楽しむ事が容易にできるのだ。

たとえば、新ではベゼクリク千仏洞の壁画とその修復が主要なテーマであったが、旧では、壁画がはぎ取られた無惨さを「列強が奪った」旨さらりと述べるにとどめており、破壊からの保護という観点や、その列強に日本も入っている事などは語られない。

旧では取材班が「いる」が、新では取材班は「出てこない」。旧の、多分その場で思いついて撮影した、三蔵法師ご一行が往く、のシーンは特に目を引いた。きっと猪八戒役にはひょこひょこユーモラスに歩くよう演技指導したのだろう。ほほえましい。そうしたスタッフのロマンへの想いが胸を打つ。一方、新では、うってかわってずっとクレバーな印象である。どちらも捨てがたいので、こうして両方いっぺんに楽しむのが、多分正解なのだろう。

また次回も楽しみにしたい。