朽ちる散る落ちる/森博嗣 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

朽ちる散る落ちる/森博嗣

2004年1月7日読了。

森ミステリーVシリーズの9冊目。Vシリーズ自体の感想は、またに譲ろう。

帯のキャッチが「地下密室+宇宙密室」となっている。宇宙密室というのもまた微妙な言葉だ。

前作にある土井超音波研究所での事件の続編という形になっている。事件解決からしばらくたった後、という設定だった気がする。

この話では、珍しく、かなり濃厚にスパイ小説のような展開が描かれる。ひょっとすると好き嫌いの分かれるところかも知れないが、割合面白く読めた。
これまでのシリーズや短編などで描かれた人物や設定が、次作のシリーズ最終巻に向かって収斂してくるような、そんな気配を感じさせる作品だ。

そのため、順番に読んできた愛読者には、シリーズを通しての謎(?)をいろいろ推理する楽しみが与えられる。このシリーズって、もしかして…なのでは?!と気づく楽しみが与えられるのだ。でも、あの話では…と書かれていたから、そんな訳無いだろう。いやまて。と、シリーズファンが2人も集まればいくらでも時間をつぶせるだろう。

本書の、本当の殺人ミステリー部分は、ほとんど肩すかしだろう。しかし、そんな事は気にせず、おおらかに楽しめばよい作品である。殺人ミステリー部分は、無理に存在しなくてもよかったかもしれないが、まあ、合っても気にならない程度だ。これはVシリーズ共通の感想でもある。Vシリーズはお話部分を楽しむ小説であって、ミステリの存在は、きっと何らかの古き契約の履行なのだろう、と思うことにしている。もしくは、表現に制約を課すことによる型式芸術なのかも。

著者: 森 博嗣
タイトル: 朽ちる散る落ちる