軽い悲嘆の後に。
夜に出社し、
深夜に働き、
朝、帰宅する。
帰りに、早朝出社して来た交代メンバーと挨拶を交わす。
彼らは皆、私の目をみる事も無く、
とりあえず、といった感じで挨拶の言葉を口にする。
彼らとは、どうしても親しくなれなかった。
また、親しくなろうという努力もしてこなかった。
彼らとは共通する話題が皆無だったし、
私とはあまりにも興味の対象が違い過ぎた。
私はテレビを観なかった。
私はパチンコをしなかった。
私はモバゲーをしなかった。
私は外で、会社の人間と酒を飲まなかった。
私は会話の糸口を、天気の話から切り出す事が大嫌いだった。
そして、
彼らの多くは本も読まなかったし、
映画も観なかったし、
スポーツや音楽に関心も無かった。
話を彼らに合わせる事は、私にも出来た。
働いている誰かの話。
地震の話。
原発の話。
芸能の話。
おそらくは、彼らも私と話をしていて、
つまらなく感じた事だろう。
私は知らぬ間に、この職場で、孤立していたのかもしれない。
それでも、
話をしたいと思える人間は何人かいた。
その中の一人に、
本を読む男が一人いた。
彼とは、
ごく狭い領域だが、興味の対象が一致しているように思えた。
本の話をしているうちに、
私は彼に一冊の本を貸したこともあった。
彼と玄関で、あった。
私は彼と話がしたいと思った。
私は彼の目をみて、朝の挨拶をする。
彼も私の目をみて言葉を返す。
私が何か話を切り出そうとしたその瞬間、
彼は私から視線を逸らし、
私の横を通り過ぎていった。
外に出ると、
鈍色の空から微かに雨粒が落ちていた。
私は酷く傷ついていた。
自分でも信じられなかった。
こんな事で傷つくなんて。
車に乗り込み、カーラジオのスイッチを入れる。
ラジオから流れる声に、
私は、驚きのあまりしばらくのあいだ屏息した。
アナウンサーは、
スティーブジョブズの訃報を伝えていた。
深夜に働き、
朝、帰宅する。
帰りに、早朝出社して来た交代メンバーと挨拶を交わす。
彼らは皆、私の目をみる事も無く、
とりあえず、といった感じで挨拶の言葉を口にする。
彼らとは、どうしても親しくなれなかった。
また、親しくなろうという努力もしてこなかった。
彼らとは共通する話題が皆無だったし、
私とはあまりにも興味の対象が違い過ぎた。
私はテレビを観なかった。
私はパチンコをしなかった。
私はモバゲーをしなかった。
私は外で、会社の人間と酒を飲まなかった。
私は会話の糸口を、天気の話から切り出す事が大嫌いだった。
そして、
彼らの多くは本も読まなかったし、
映画も観なかったし、
スポーツや音楽に関心も無かった。
話を彼らに合わせる事は、私にも出来た。
働いている誰かの話。
地震の話。
原発の話。
芸能の話。
おそらくは、彼らも私と話をしていて、
つまらなく感じた事だろう。
私は知らぬ間に、この職場で、孤立していたのかもしれない。
それでも、
話をしたいと思える人間は何人かいた。
その中の一人に、
本を読む男が一人いた。
彼とは、
ごく狭い領域だが、興味の対象が一致しているように思えた。
本の話をしているうちに、
私は彼に一冊の本を貸したこともあった。
彼と玄関で、あった。
私は彼と話がしたいと思った。
私は彼の目をみて、朝の挨拶をする。
彼も私の目をみて言葉を返す。
私が何か話を切り出そうとしたその瞬間、
彼は私から視線を逸らし、
私の横を通り過ぎていった。
外に出ると、
鈍色の空から微かに雨粒が落ちていた。
私は酷く傷ついていた。
自分でも信じられなかった。
こんな事で傷つくなんて。
車に乗り込み、カーラジオのスイッチを入れる。
ラジオから流れる声に、
私は、驚きのあまりしばらくのあいだ屏息した。
アナウンサーは、
スティーブジョブズの訃報を伝えていた。