カフェを、カフェにて
その男はカフェを経営したいと思っていた。
男は、うっとりとしながら夢想する。
小さな店で、
その長方形の店内の、長い方の壁一面に大きな本棚を据え付け、
好きな本で埋め尽くす。
ビート文学。
紀行もの。
ニューエイジ系。
科学関係。
古典文学。
時代小説。
SF小説。
溢れんばかりの本に取り囲まれて、
ゆっくりと本を読む。
最高の空間だろうと男は思う。
それから男は考える。
カフェなのだから、飲みものを出さねばならない。
勿論珈琲を出すのだが、男はさほど珈琲が好きではなかった。
食べるものもにも興味がなく、
店で出せる様なものなど作れるはずもなかった。
男はそこまで考えて、気付くのだった。
俺はカフェなんかをやりたいのではなく、
おそらくは、本屋をやりたいのかも知れない、と。
男は気を取り直し、再度想像の世界に入ってゆく。
狭い店内に、列をなす書棚。
奥のカウンターに男が座っている。
暗い店内。
客はなく、男は自分が途方に暮れる姿を想像する。
男の想像力は乏しかった。
どうしても、男の経営する書店が繁盛するというところまで、
想像出来ない。
男はもう一度、カフェを経営する自分を想像する。
こちらの方は、とても繁盛している。
眼鏡を掛けた、可愛らしいアルバイトの女の子に笑いかける。
女の子は軽く頷き、客に珈琲を運ぶ。
珈琲の香り。
そこに少しだけ、古びた本の香りが重なる。
男は満足げに微笑み、珈琲を入れる。
男は夢見心地のまま、日曜日の黄昏時を、
一杯300円の珈琲を飲みながら、
とあるカフェで過ごすのだった。
それは決して悪いことではない。
夢をみる。
どんな偉業も、
ほんの些細な成功物語も、
やろうと思っていた風呂場のタイル磨きも、
全てはそこから始まるのではあるまいか?
男は、うっとりとしながら夢想する。
小さな店で、
その長方形の店内の、長い方の壁一面に大きな本棚を据え付け、
好きな本で埋め尽くす。
ビート文学。
紀行もの。
ニューエイジ系。
科学関係。
古典文学。
時代小説。
SF小説。
溢れんばかりの本に取り囲まれて、
ゆっくりと本を読む。
最高の空間だろうと男は思う。
それから男は考える。
カフェなのだから、飲みものを出さねばならない。
勿論珈琲を出すのだが、男はさほど珈琲が好きではなかった。
食べるものもにも興味がなく、
店で出せる様なものなど作れるはずもなかった。
男はそこまで考えて、気付くのだった。
俺はカフェなんかをやりたいのではなく、
おそらくは、本屋をやりたいのかも知れない、と。
男は気を取り直し、再度想像の世界に入ってゆく。
狭い店内に、列をなす書棚。
奥のカウンターに男が座っている。
暗い店内。
客はなく、男は自分が途方に暮れる姿を想像する。
男の想像力は乏しかった。
どうしても、男の経営する書店が繁盛するというところまで、
想像出来ない。
男はもう一度、カフェを経営する自分を想像する。
こちらの方は、とても繁盛している。
眼鏡を掛けた、可愛らしいアルバイトの女の子に笑いかける。
女の子は軽く頷き、客に珈琲を運ぶ。
珈琲の香り。
そこに少しだけ、古びた本の香りが重なる。
男は満足げに微笑み、珈琲を入れる。
男は夢見心地のまま、日曜日の黄昏時を、
一杯300円の珈琲を飲みながら、
とあるカフェで過ごすのだった。
それは決して悪いことではない。
夢をみる。
どんな偉業も、
ほんの些細な成功物語も、
やろうと思っていた風呂場のタイル磨きも、
全てはそこから始まるのではあるまいか?