本を読む女 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

本を読む女

スタバ。
私の座る向かい側に、女がひとり座っている。
肩まで伸びた長い髪。
腕を組み、何か意味ありげに、ある一点を見つめ続けたり、
テーブルに肘をつき、
手のひらに顎をのせ、開いた本に視線を落としたり。
長い髪をかき分け、左の耳に触れ、
少しだけ首をかしげてみたり。
私はそんな女をみて、
この気配は、
何かを期待しているに違い無いと勝手に思いこむ。

本を読む姿が美しい。

そんな女性が好きだった。

知的な女性の方が、
下品で、
馬鹿で、
凶暴で、
粗野な女よりも、
良いに決まっている。

しかし、

私が恋人と呼べるまでに親密になった女性はいつも、
後者だった。
それは関係が深まった時に、
そういう素養だということが、
判明する。


いつも、取り返しがつかなくなったときに。

向かいの女が何を読んでいるのか気になった。
私は思う。
今、声を掛けたら、
どうなるだろうか、と。