暑いから、夏なのだ
すべての事象は、
相反する両極の間で揺れ動いている。
どちらかの極で存在するものなど、
この世に一つもない。
生と死。
善と悪。
夏と冬。
秋と春。
液体と固体。
それは心であれ、
物質であれ、
宇宙全体であれ、
意識すらも、
はっきりとした実体など無いのだ。
これは、
おそらくは正しい。
真理とまでは言わないが。
生温い風が頬を打った。
エアコンは取り払われてしまって、扇風機だけがたよりだった。
何故、別れる前にエアコンが取り払われたのだろうか?
取り払われたエアコンは、
無料で回収業者に引き取られていった。
壁にはエアコンが取り付けてあったところだけ、
ペンキの塗り残しが覗いている。
嫌がらせ、
だったのだろう。
娘は今どうしているのだろうか?
元気にしているのか?
別れた後、
数度、娘の母親が荷物を取りに家にやって来たが、
娘の姿を見る事は一度もなかった。
一年半。
娘の姿はもちろんの事、
声すらも聞いていない。
逃げるように、
何故、私のすべての痕跡を娘の前から消し去るように出て行ったのか、
今ならよくわかる。
「何故、住んでいる場所すらも教えられない?」
「あんたが別れた後、娘に会うなんて、娘が混乱するだけでしょう!」
私の存在を消し去りたい理由が、
わたしにははっきりとわかった。
蝉の声が、暑さを増大させる。
不吉なカラスの鳴き声も時折まじって、
憂鬱な気分にさせられる。
仕事前に、睡眠をとらねばならない。
しかし、眠る事は出来なかった。
暑いから夏なのだ。
私は汗を流しながら、つぶやく。
この夏も、
いつかは終わる。
はっきりとした境界などわからぬまま、
季節は秋へと移り変わって行く。
そして、
はっきりとしないまま、気が付くと冬なのだ。
そう。
きっと、人の死もそうなのではあるまいか?
日々少しずつ死んで行く。
それが、生きるという事なのだろう。
相反する両極の間で揺れ動いている。
どちらかの極で存在するものなど、
この世に一つもない。
生と死。
善と悪。
夏と冬。
秋と春。
液体と固体。
それは心であれ、
物質であれ、
宇宙全体であれ、
意識すらも、
はっきりとした実体など無いのだ。
これは、
おそらくは正しい。
真理とまでは言わないが。
生温い風が頬を打った。
エアコンは取り払われてしまって、扇風機だけがたよりだった。
何故、別れる前にエアコンが取り払われたのだろうか?
取り払われたエアコンは、
無料で回収業者に引き取られていった。
壁にはエアコンが取り付けてあったところだけ、
ペンキの塗り残しが覗いている。
嫌がらせ、
だったのだろう。
娘は今どうしているのだろうか?
元気にしているのか?
別れた後、
数度、娘の母親が荷物を取りに家にやって来たが、
娘の姿を見る事は一度もなかった。
一年半。
娘の姿はもちろんの事、
声すらも聞いていない。
逃げるように、
何故、私のすべての痕跡を娘の前から消し去るように出て行ったのか、
今ならよくわかる。
「何故、住んでいる場所すらも教えられない?」
「あんたが別れた後、娘に会うなんて、娘が混乱するだけでしょう!」
私の存在を消し去りたい理由が、
わたしにははっきりとわかった。
蝉の声が、暑さを増大させる。
不吉なカラスの鳴き声も時折まじって、
憂鬱な気分にさせられる。
仕事前に、睡眠をとらねばならない。
しかし、眠る事は出来なかった。
暑いから夏なのだ。
私は汗を流しながら、つぶやく。
この夏も、
いつかは終わる。
はっきりとした境界などわからぬまま、
季節は秋へと移り変わって行く。
そして、
はっきりとしないまま、気が付くと冬なのだ。
そう。
きっと、人の死もそうなのではあるまいか?
日々少しずつ死んで行く。
それが、生きるという事なのだろう。