別れ | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

別れ

昨日。

病院から猫を引き取り、

猫が元気だった頃、そこで過ごした居間と和室の二間続きの部屋へ猫を横たえた。


フードと水と花を猫の傍らへ供えた。

今日一日は一緒にいたかった。

形ばかりのお通夜だ。


動物病院では、冷静に猫の死を受け止めていたが、

家へ連れ帰ると、涙が止まらなかった。

猫を撫でながら話しかけた。

まだ皮膚も柔らかく、胸が上下していないだけで眼も潤んでいて、

死んでいるように思えなかった。


その日。

私は仕事に出かけ、

また余震があり、

いつもより早く帰宅する事が出来た。


帰宅し猫に触れると、猫はすでに固くなっていて、目の光も消えていた。


翌朝。

私は余震で目覚め、庭に出てスコップを持ち、庭の片隅に猫を埋めるために穴を掘った。



「庭に埋めようと思うのですが、タオルにくるんであげた方が良いですか」

私は医者に尋ねた。

「タオルに包むと土に還らないので、直に埋めてあげてください」

と言われた。


庭に梅の木があった。

もう梅の花は散ってしまっていて、微かな花びらの残滓が枝の先にのこるだけだった。


梅の木から離れた同じ境界沿いに猫を葬った。


犬は、娘の母親の実家の庭に、私が葬った。


子供の頃買っていた小型犬も、

共同墓地の林の斜面に、私が葬った。


もう、ごめんだった。


一人でも、

それでも、しかたない。

それでいい。