悪夢、それとも? | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

悪夢、それとも?

夜勤明け、そして。

俺は病院にいた。

健康診断だった。

小さなアンプルを肩に注射され、

白い、まるでアンドロイドの血液のような液体を飲まされ、

これから回転式台座に乗って、

放射線を浴びるために。


その白い液体は、重金属らしい。

つまりは有害物質だ。


「クスリが効くまで、ベンチでお休みください」

俺は寒さに震えながら、ベンチで目を閉じた。


すぐに睡魔に襲われ、

意識が途切れ、

別の映像が目の前に広がった。



これは夢なのか?

それとも?



褐色の肌の女が目の前にいた。

どこの国の出身か。


何だか眠そうな目をしている。

顔色も悪い。


何故?


目の前のその女は、

苦痛で顔をゆがめているのだということが、わかった。

俺はなぜだか、その表情を美しいと感じた。

俺はその女を抱き起こし、

手を取ってみつめた。


茶色のセーターの、

腹のあたりに穴があいていていた。

その穴から、

赤黒い液体がぬめりとした光を放っていた。


銃かなにかで撃たれたのか?


女は俺に何か言いたげで、

唇を動かしている。


俺はたまらずに、女を支えている両手に力を入れる。


なんてこった。


死ぬなよ。


たのむよ。



ひょっとして、


俺が撃たれるべきだったんじゃないか?


そう思ったとき、看護婦の声で俺は目を覚ました。




俺はバリウムを飲み込み、

可動式の台の上で考えていた。


今の夢はいったい何だったのか?


発泡剤を飲まされたときに、

ゲップは我慢してくださいと言われていた。


しかし、


俺は我慢出来なかった。


多分、胃の中のガスは相当量抜けてしまったに違いない。


俺は医師のいる方向をちらと、盗み見た。


「………」

すると、


年老いた医師の間の抜けた声が聞こえる。

「はい、左へ向いて息を止めてください」


俺はほっとし、

医師の言われるがままに息を止めた。



「被爆している」


俺はそんなことを何となく頭の中でつぶやき、

そのまま目を閉じた。